細かいプラクティスよりアジャイルのマインドセットが大事な理由

アジャイルの注目が高まっていて、弊社にも相談の問い合わせも増えています。
そうして相談に乗ったり、コンサルティングをやらせていただく中で、アジャイルの知識の必要性もそうですが、何よりマインドセットが欠かせないと考えるようになりました。

そしてこれは、アジャイルの仕事術の肝であり、アジャイルチームが上手くいくための鍵、そしてアジャイルなプロジェクトが成功する「秘訣」でもあることがわかってきました。

逆の言い方をすると、アジャイルへの移行やプロジェクトが失敗するのは、このマインドセットが無いまま、アジャイルの様々なプラクティスや手法をやろうとしているからと言えると思います。

つまり意味や意義もわからないまま、バックログやスプリント、デイリースタンドアップなど山ほどある「プラクティス」を覚えても、「テスト前の丸暗記をする学生」みたいなもので、身につけることは到底望めないわけですね。

あるいは「とにかく早く(PDCA等を)回すことだ」みたいな“勘違いアジャイル”が生まれてしまう恐れもあります。

アジャイルに関する相談で一番多いのが、既存のチームをアジャイルに移行したいというもの。
一からチームを構築するのも簡単ではありませんが、それまで長年染み付いた仕事のやり方を変えようというのは大変なことです。

上述のようにマインドセットを変えずに手法やプラクティスを覚えても、すぐ忘れてしまいますし、ちょっとでも想定外のことが起こるとマニュアル外のことは対応もできません。(現実のビジネスは想定外だらけですよね!)

「アジャイルのマインドセット」をまず身に着けることで、想定外なことにも対応できるようになりますし、何よりもやり方を変える際の様々な困難にチームとして立ち向かうことができるようになります。

細かいプラクティスを忘れたり、やり方がわからなくなったとき、そしてチームの中や上層部と軋轢や意見の違いがあったときも、この「マインドセット」に立ち返って考えれば、きっと良いアイデアや解決策が生まれると思います。

アジャイルの3つのマインドセット

アジャイルに必要なマインドセットはこの3つです。
1.共通の目標(パーパス)
2.情報共有
3.フィードバック

1.共通の目標(パーパス)
「目標設定するのはあたりまえじゃない」という声もありそうですが、アジャイルを行ういわゆる「自律組織」では、「目標」つまり「共通の旗」の重要性がより増します。

ピラミッド型組織での業務や、ウォーターフォール型のプロジェクトでは、上司に従う、あるいはあらかじめ決められたタスクをこなしていけばいいので、メンバー一人一人の「内面(内面的動機など)」はそれほど問う必要はありませんでした。

しかし状況を見ながらひとりひとりの意思決定がより重要となるアジャイルな組織において、それぞれが個人の目標を持ち、その個人の目標が全体の目標と同調するような組織である必要があります。
アジャイルの手法の一つ、「スクラム」の語源でもあるラグビーの「One for All, All for One」のマインドという言い方が近いでしょうか。

この共通の目標(パーパス)をチームで創るためのメソッドとして、「アジャイルサムライ」で紹介されている「インセプションデッキ」や組織デザインのメソッドである「アプリシエイティブ・インクワイアリ」などがあります。

私たちは、上記のメソッドも踏まえ、パーパスを共有化するメソドロジー(方法論)として、アート思考を活用して、「想いと共創と具現のワーク」を開発し、ワークショップなどで紹介しています。
この手法は、アジャイルに限らず、企業理念やパーパスの浸透にも大変効果のある手法だと思います。


 
  
2.情報共有
「情報の可視化」と言い換えても良いかもしれません。
一人一人が正しい行動をとるためには、現状がきちんと把握できていることが必要で、そのためには情報がそれぞれ把握できる「情報共有」「情報の可視化」が必要です。

大企業などで、部門の壁ができたりセクショナリズムに陥ったりするのも、部門を超えた情報共有の仕組みがないからですし、部下が自分勝手な行動をとるのも、部門全体の情報を(その部下が)知る仕組みがないからです。

アジャイルでよく使われる「カンバンボード」などは要は「情報共有」「情報の可視化」の仕組みです。

また情報やデータは、それ単体で価値を持つことはあまりありません。
情報(データ)のつながりを、全体感を持ってできるだけリアルタイムに把握できる仕組みも必要です。
一例として、「プロセスマイニング」の手法は、データという点を線や面にしてくれるツールとして、業務等のプロセスのどこに問題があるか可視化してくれます。

3.フィードバック
パーパスや情報共有(情報の可視化)は、アジャイルのマインドセットに欠かせない要素ですが、それを実際のビジネスで生かすことができるのは、フィードバックを絶え間なく行ってこそです。
目標と現状を絶えず見ながらフィードバックを行っていく。これがイテレーションやスプリントを行う意味ですし、デイリースタンドアップを毎朝行う意味になります。

詳しくは「アジャイルは振り返り(レトロスペクティブ)から始める」も併せてご参照ください。

 
迷ったときや様々な問題・課題にぶつかったとき、この3つのマインドセットに立ち返れば、それを乗り越えることができるようになると思います。


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