コロナ禍でリモートワーク、テレワークに移行する企業が急増しているようです。

それに伴ってWeb会議などコミュニケーションソフトウェア等を提供する会社に注目が集まっています。代表的なツール「Zoom」を提供する「Zoom Video Communications」は株式市場が大暴落している中で、3月23日には上場来最高値を更新しています。

もともとリモートワークやテレワークは、「働き方改革」の一環として導入が推奨されてきたものの、遅々として進まない状況でしたが、ここに来て一気に拡がりを見せています。

そういう中で注目されるZoomですが、どのように活用すれば効果的なのか、リモートワークの生産性を上げることができるのか。多くの企業ではまだ手探りの状況のようです。

ここでは、Zoomを活用して、リモートワークやテレワークをどのように行うべきかについて述べてみたいと思います。(Zoom自体の設定方法や使い方は公式サイトに説明やチュートリアルが色々ありますので、そちらをご覧ください。)


  
(Zoomの他、日本でシェアが高いWEB会議システムとして、シスコの「Webex Meetings」や「Microsoft Teams」などがあります。それらをご使用の場合も同じようにご活用いただけばと思います。)

いつどのくらいZoomに繋げればいいか

Zoomを行うタイミングですが、「繋げっぱなしにする」「必要なときに不定期で行う」といった使い方もありますが、繋げっぱなしは回線やPCなどのシステムに余計な負荷がかかりますし、リーダーやマネージャーによるマイクロマネジメントに繋がりやすく余計な業務負荷を負います。
また、「必要なときに不定期で行う」というやり方だけでは、効率的なマネジメントができない恐れがあります。

テレワークを始めた企業の社員から「オンラインでの打ち合わせや会議がやたら増えて、気づいたら一日中会議やっていた」「会議ばかりで全く生産性が上がらない」という声も聞きます。

私が考えるZoomの最も効率的な使い方は、

・1日1回、時間を決めてチームの全体WEBミーティングを行う。
・その他は必要なメンバーで必要なときにWEBミーティングを行う。

この2つの併用だと思います。

なお、ここで言うチームとは、数人から多くても10人以下の人数のチームを想定しています。もし同じ部署やプロジェクトの人数がそれより多い場合、サブチームの形で分割することをおすすめします。

部署の全体ミーティングを行ったあとに、Zoomの「ブレイクアウトルーム」の機能を使ってチームごとのミーティングを行うといった使い方もできます。
Zoomブレイクアウトルーム入門(動画とテキストによる説明)

一案おすすめなのは朝、始業時間にチームごとに集まって15分のミーティングを行うやり方です。
そして、その他は業務の必要に応じて打ち合わせやミーティングにZoomを活用しましょう。

マイクロマネジメントを行わない体制であることが必要ですが、顔が見えたほうがお互いコミュニケーションが取りやすいのも事実です。㈱ソニックガーデンが開発した「Remotty」は、業務中常に繋ぎっぱなしが前提で、回線にあまり負担をかけず、お互い顔を見られて雑談や相談(ザッソウ)がやりやすい環境をつくるツールです。
リモートワークのための仮想オフィス「Remotty」

効果を上げるWEBミーティングのやり方

複数の人数によるWEBミーティングでは、まとまりがないものになりがちです。画面越しではリアル以上に聞いているフリも容易です。手元で別のことをしててもこちらにはわかりません。
ミーティングリーダーのファシリテーション能力がリアル以上に問われます。
まずは目的をしっかり定めて、それに絞って進めることが大事です。

毎朝「朝礼」を行っている会社は多いと思います。そのような会社の「朝礼の目的」は、「情報共有」「目標(ノルマ)の達成度の確認」「一体感を高める」それから「リーダーによる説教や訓示」など多岐にわたることが多いのですが、これをそのままWEBミーティングに乗せると冗漫になってしまいます。
毎朝のチームミーティングでは、15分としっかり時間を区切って、それを超えないようにします。そしてこのミーティングの目的は「情報共有」のみに絞るのがコツです。具体的には次の3点について、それぞれが発表します。

1.チームの目標を達成するため、昨日行ったことは何か。
2.チームの目標を達成するため、今日行うことは何か。
3.自分やチームが目標を達成するにあたっての障害は何か。

繰り返しになりますが、このミーティングは「情報共有」が目的です。それぞれがどんなタスクを持ち、どこまで進めているか、障害や問題点はなにか。それをチームで共有するのが目的です。
また、1日1度同じ目標を持つチーム全員が顔を揃えることによって、士気を上げる効果も見逃せないでしょう。

朝の定例ミーティングはあくまで「情報の共有」に止め、「問題や課題の解決の深い話し合い」は行いません。それをやると「批判の応酬」になったり「誰かを責める」結果になったりして逆効果です。
15分の間に解決できない問題や、メンバーと個別に話すのは、定例ミーティングの後に別途設定するようにします。

Zoomとチャットの併用

リモートワークやテレワーク中の通常のコミュニケーションは、チャットを活用します。
メールではリアルタイム性がありません。文書の送付や、あとに残すための連絡や通知はメールで行い、ワーク中の会話はチャットで行う、という使い分けをします。
口頭と違ってテキストが残るため、言った言わないの不毛な議論を避けることもできますので便利です。

Zoomにもチャット(IM)機能がありますが、チャットに関してはSlackを使用している会社が多いようです。SlackとZoomをまとめることもできますので、下記を参考にしてください。
Slack で Zoom を利用する

リモートだからこそチームで仕事をする。

また、リモートワークやテレワークを行う前提として、「リモートだからこそチームで仕事をする。」というのがあります。

President Onlineに、リモートワークの課題や問題点について触れた記事がありました。

数年前にIT企業が営業部門のセールスエンジニア職の在宅勤務を含むテレワーク参加者を募集した。

会社に行くのは週1回のミーティングのみで、あとはテレビ会議を通じて必要な打ち合わせを。人事評価の基準は「顧客との成約」などの目に見える成果が中心になる。当初、20代後半から30代の多数の社員が手を挙げた。

その一人の30代のA氏は「結局、仕事のコントロールなど自己管理が難しく、3カ月もたたずに挫折しました」と語る。自己管理ができないだけではなく、仕事や会社に対する意識にも大きな影響を及ぼすようになったと言う。

「チームを離れて仕事をしているうちに、『この仕事は自分がいなくても誰でもできるんじゃないか』と思う人が増えました。また、チャット上でのやりとりばかりで、結果的に個人のパフォーマンスが目立つようになり、マネージャーは『君の数字が足りていないね、誰がカバーしますか』というチャットばかり。前向きの議論はしなくなりました。その結果、かなりの人が『会社を辞めたい』『別の部署に異動したい』と声を上げるようになり、組織は崩壊しました」

在宅での仕事を続けていくうちに顧客との関係でつまずくこともある。同じオフィスにいれば、誰かがサポートすることも可能だが、在宅勤務では自分で悩みを抱え込んでしまい、その失敗を引きずってしまうことがあった。

リモートワークが実力をあぶり出す。「コロナ不況」で真っ先にリストラされる人の条件(President Online)

 

 
リモートワークやテレワークを行う場合、「個人としての仕事の進捗度や達成度」で評価をするようになると、マネージャーが雇用主である個人事業主ワークのようになってしまいます。
記事にもあるように、リモートワークでは一人ひとりに「自己管理」が強いられますが、そうするとメンバーは孤独になりモチベーションも下がります。当然能率や生産性は落ちますので、その結果を見たマネージャーはメンバーの行動を縛ろうとする「マイクロマネジメント」をやりがちになります。(そうするとますますメンバーはやる気を失い、生産性もますます落ちるという悪循環に陥ります。)

マネージャーがマイクロマネジメントを行うと、メンバーは「いかに仕事をするふりをするか」「形の上だけでもやったことにする」という行動をとるため「仕事の質」が下がります。
またマネージャーも部下の行動の管理(あら捜し)という生産性とは関係ない業務に追われますから、チームとしての仕事の質も大きく下がる結果となります。

つまり単純に今のまま(不完全なチームのまま)「リモートワーク」に変えても効果がないどころか、「組織が崩壊」する恐れもあるわけです。

結局は単にツールをいれればいいという話ではなく「今の状況に対応するため、どういう組織に変わるべきなのか」「どう仕事に取り組むべきか」を考えないと失敗するというのが、上記記事が教えてくれるところです。

逆に言えば、リモートワークは組織を変え、仕事の取り組み方を見つめ直すチャンスでもあります。

リモートワークだからこそ「チーム単位で仕事をする」というのが大切になってきます。チームでひとつのプロジェクトを達成させる。メンバーへの評価も細分化された個々のタスクの達成度ではなく、チームとしてのプロジェクト達成への貢献度という指標で図るようにすべきです。

タスクの管理と共有がまず大事

そのためには、今までの仕事のやり方を変える必要があります。
単純にチームのタスクを機能ごとにメンバーに割り振るのではなく、まず「チームの達成すべき目標」を定め、それをメンバー全員と共有した上で「タスク」を1人日以下の大きさに分割していきます。

誰がそれぞれの「タスク」を行うかは、勿論メンバーの専門性を加味しながら決めていきますが、任せっぱなしではなく、責任はチーム全体にあるということを常に頭に置きながらタスクを割り振っていきましょう。
慣れてくると、朝のミーティングのときに自然と(自律的、自己組織化的に)「チームの目標を達成するため、今日行うことは何か。」がそれぞれ決められるようになっていきます。サッカーやラグビーで、いちいちコーチが指示しなくても自然とパスが通るようなイメージです。

全体を共有するためにホワイトボード(リーダーが管理する形にするか、WEBツールも色々あります。)で下図のようにタスクを可視化してください。
 

 
(※)オンラインホワイトボードについては下記記事で解説しています。
Zoomとオンラインホワイトボード(miro)を使った研修やワークショップの方法

「チームの目標」があり、現在の全体の状況と合わせて、チーム全体で可視化されて初めてメンバーは自律的に動くことができ、その結果として生産性を上げることができます。(サッカーやラグビーのチームがまさにそうですね!)

マネージャーは「マイクロマネジメント」ではなく、メンバーがモチベーションを上げて仕事に打ち込めるような環境や仕組みづくりに徹するくらいの気持ちでいるほうがうまくいくと思います。
その上で、毎朝のチームミーティングを行うようにすると、効果的なWEBミーティングが行なえます。

その他週末に行う「チームの振り返り」などの、「タスク管理術」については下記の記事も併せて御覧ください。
「スクラム」が教えるリモートワーク(テレワーク)仕事術

ZoomやSlackといったツールのおかげで、リモートワークやテレワークが便利に行えるようになりました。ただこういう便利なツールも「ツール」にすぎません。

リモートワークやテレワークに適した仕事のやり方を行い、改善を続けていく、これが経営者やリーダーの一番の仕事だと思います。