営業マン受難のニューノーマルの時代

5月末になって、新型コロナウイルス禍の「緊急事態宣言」が解除となりました。今後は、感染の再拡大防止と経済や経営の再建を両睨みで進めていくことが、何より大切なことになります。

アフターコロナ(コロナ後)のニューノーマル(新常態)という言葉もすっかりおなじみになりました。コロナ禍の収束自体はまだまだ先ですが、仮にワクチン開発が予想以上に進んで収まったとしても、時計の針が巻き戻ることはないと思います。

アナログからデジタルへの流れは、コロナ禍と関係なく世界規模で進んでおり、コロナ禍はそれをいくらか早めたに過ぎません。(それでも日本はコロナ以前の欧米や中国、韓国にも追いついていませんが。)

おそらく、今後の企業は、短期的には、テレワークを含むデジタル化、リモート化の流れを加速させる企業と、コロナ以前の業態に戻ろうとする企業の2極化が進むと思います。

今までの日本の企業では、建前はともかく本音では「デジタル化」「DX」など本気で考えたこともなかった企業がほとんどと言っても良い状況でしたので、そういう企業の経営者は、またもとに戻ろうとするのではないでしょうか?

組織改革のないDX(デジタル・トランスフォーメーション)ブームの絶望感

ただし、残念ながらもとに戻ろうとしても、もう無理だと思います。
上述したように、「デジタル社会への流れが加速しているから」なのですが、もう少し具体的に記してみたいと思います。

まず第一に、一度在宅(リモート)勤務やオンライン会議の便利さを味わってしまった人が、また満員電車で会社に行くのを良しとするでしょうか?
少子化や人口減少の流れも変わりませんので、経済が復興するにつれて、再び人手不足は深刻になってくるでしょうが、そういう会社に人手、特に優秀な人材は来ないでしょうし、人材流出は激しくなるでしょう。

そしてもっと深刻になると予想されるのが、営業やマーケティングに携わる人たちです。

日本企業では未だ「足で稼ぐ」を推奨する文化が根強くあり、夜討ち朝駆け、きめ細かく顧客先を訪問し、会社が終わった後も「夜の店での接待」「接待ゴルフ」「接待麻雀」などで濃密な人間関係をつくる、といったことが行われてきました。

しかしそれを吹き飛ばしてしまったのが、今回のコロナ禍です。
典型的な濃密接触である「接待」ができなくなったばかりでなく、訪問営業することすら難しい。「ちょっとご担当の方にお話だけでも」とか「近くまで来たのでご挨拶に伺いました。」などと受付に来られたら、「社内感染を防ぐために苦労している最中に、なんて常識もデリカシーもない人なんだ」と一発でアウトでしょう。

そればかりでなく、「担当の方」は、そもそもリモート勤務で会社にいないので、テレアポ自体不可能というケースも増えると思います。
そのためにDMやメールでの営業が増えているようです。(弊社にも問い合わせからの営業メールがここ1ヶ月で倍以上になりましたが、申し訳ないですが殆ど無視しています。)
また、「オンライン営業セミナー」も各地で行われているようで、Zoomなどを活用した営業手法ツールも増えているようです。
しかし、既存顧客ならともかく新規顧客に対し、いきなりオンライン営業をすることは不可能に近いですよね。

インバウンドマーケティング

MIT出身で、ハブスポットを立ち上げたブライアン・ハリガンらが名付けたマーケティング手法が「インバウンドマーケティング」です。
それまでの「営業」「広告宣伝」という相手の行動様式の中に立ち入る、介入する手法を「アウトバウンドマーケティング」とし、顧客自らの意思でやってくる手法を「インバウンドマーケティング」と定義しました。

一番わかり易いのが、検索エンジンを活用したマーケティングです。
つまり狩りのようにこちらから獲物を探しに行くのではなく、向こうから探してもらう、見つけてもらうマーケティング手法。

そのために必要なのが、(潜在)顧客が、探したい、見つけたいと思ってる情報(コンテンツ)になります。そのためのコンテンツが「ブログ」「SNS」の記事です。
顧客にとって有益で役立つ情報(コンテンツ)をサイトに掲載することで、潜在顧客のアクセスを集め、そこから問い合わせや申込みにつなげて、顧客から推奨者へと転換させていく手法です。

下図は、ハブスポットによる「Inbound Marketing Methodology」です。
後半は通常のWEBマーケティングと同じですので、前半部分がインバインドマーケティングで 特に大事な部分です。

コンテンツの内容が大切

インバウンドマーケティングやコンテンツマーケティングの肝は、そのコンテンツの内容です。よくやりがちな間違いが2つあります。
1. とにかく世間や顧客の関心あるテーマを書いてしまう。
2. 自社の宣伝を延々書いてしまう。

「インバウンドマーケティング」の本にも、例えば「助成金の申請方法」など、顧客が必要なレポートと交換でメールアドレスを取得する、という事例がまえがきに書かれています。
今ならまさに「雇用調整助成金の申請方法」とか望まれるトピックかもしれません。

しかし、あなたの会社が「中小企業コンサルティング」とかでない限り、このようなトピックでアクセスを集めても、そこからVisitor(訪問者)をCustomer(顧客)へ転換する、リードするのは難しいので注意が必要です。
「役に立つ」「(顧客に)メリットがある」情報(コンテンツ)を提供することは、確かに大事なことではありますが、それは「必要条件」であって、「十分条件」にはなりません。

実際私自身何度も体験しましたが、いい情報、お得な情報を出せば検索エンジンからたくさんアクセスが集まります。しかし、それだけでは記事が読まれて、あるいは動画が観られて終わりです。

ここから「マネタイズ」につなげるには、顧客に「共感」してもらうことが必要です。
共感があって初めて、信頼が生まれ、あなた自身、あるいはあなたの会社の商品やサービスに「お金を払う」という行為が生まれる。

共感を呼ぶコンテンツはどうすれば良いかということについては、オンラインビジネス成功の3つの鉄則に記したのでご一読いただければと思います。

今回のコロナ禍を凌いでも、おそらくこれからは然災害、経済危機など様々な危機が私たちを襲うことになると思います。

この機会に「インバウンドマーケティング」「コンテンツマーケティング」の仕組みを入れ、危機に強いレジリエンスな組織を創ることがますます重要になってきそうです。