DX(デジタル・トランスフォーメーション)のデザインとは

DX(デジタル・トランスフォーメーション)をどのように導入、あるいは進めていけばよいか、もちろん会社ごと、組織ごとに異なります。
だからといって目標も設計(デザイン)もなく、「よそもやってるから」「上から言われたから」「システム会社に提案されたから」という姿勢では、うまく行かないことも明らかです。

DXデザインの手法を知った上で、それをどのように自社に適用させていくか、という考え方をする必要があると思います。

DXデザインは次のプロセスを踏む必要があります。

1.現状の分析(何が問題なのかを的確に述べることができる)
2.DXの目標設定
3.システムの設計(モデリング)
4.運用と評価の手法と基準を定める

もしDXの導入を進めようとしているのだとしても、この4つについて明確に答えられないのなら、DXを進めるべきではありません。

もっと酷いケースになると、そもそもDXが何かもわからずに、DXを導入しようとする企業もあって、ここまで来ると笑い話にもなりませんよね。

そもそもDXとはなにか

経済産業省が2018年9月に発行した「D X レポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」では「DXの定義」を次のように記しています。

「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること

太(下線)文字も、もともとレポート中に記してあるものです。

つまりDXの要件は、
「新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、競争上の優位性を確立すること」になります。

この目的の達成のため「デジタルを使ってやりましょう」というのがDXの趣旨であって、システムのリプレースとか、クラウドとか、データ解析がどうのとかは、DXの目的ではなくあくまで手段にすぎません。

(だからもし、あなたの会社にシステム会社やコンサルティング会社から「DXの提案・・・」とか営業があったら、上記の文章を示した上で、「DXの提案ということはうちの会社の新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを、御社のシステムでどう創出するかというところを提案してくれるということですよね?」と返答してあげましょう。)

DXデザインのプロセス

ここからは、DXデザインのプロセスに沿って説明したいと思います。

1.現状の分析(何が問題なのかを的確に述べることができる)

おそらく「現状分析」や「問題の把握」という言葉は、いろいろなところで(耳にタコができるほど)聞いたと思います。

しかし実際の現場をみると、これをきちんと行っているところは実はほとんどありません。
現場で話を聞くと「経営陣は現場の問題がわかっていない」と言いますが、現場自身もわかっていると言えるところはほとんどない。不平や不満、「こうなったら良いのに」というふわっとした願望は、ここで言う「問題の把握」ではないことに気づく必要があります。

DXについての現状分析とは、「DXの定義」の「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引」に対応する現状のことです。

つまり、「外部エコシステム」と「内部エコシステム」の現状分析です。
そして「問題」とは、現状と「あるべき姿」のギャップのことを指します。

具体的には、下図のように5つのステップで現状分析と問題の把握を行います。
 
 

 
 

2.DXの目標設定

この目標設定でやりがちなのが、上でも書いたように何か新しいシステムやツールを入れること(クラウドやRPA、ローコードツールなど)といった「手段」と「目標」を取り違えることです。

DXの目標設定とは、「新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、競争上の優位性を確立すること」を自社に適用させたものになります。

ここでいう「新しいビジネス・モデル」として参考になるのが、カインズ、ワークマンなどを有するベイシアグループの取り組みです。

ベイシアは、リアルとインターネット(オフラインとオンライン)の相乗効果でビジネスを拡大する、OMO(Online Merges with Offline)戦略で売上をアップさせるビジネス・モデルを、DXの柱としています。
そしてこの相乗効果によって、売上を伸ばす、競合他社との間で、競争上の優位性を確立する戦略が、「ぐるぐる図」で表されています。

図表1:ベイシアのデジタルコンセプト「ぐるぐる図」
DIAMOND Chain Store ONLINE「開始から1年で劇的変化!「ぐるぐる図」で OMOを強化するベイシアのDX戦略とは」


 
  

3.システムの設計(モデリング)

システム設計というと、「クラウド~」「RPA~」「ノーコード~」と言いたくなりますが、まず、前項の目標を達成するために、何をするべきか、そしてどういうプロセスを踏むかを考えるのが先です。そうして初めて、どういうシステム(クラウド含むハードウェアやソフトウェア)を入れるべきかという議論が成り立ちます。

この順番を間違えないで下さい。

具体的には、
Ⅰ.前項の「ぐるぐる図」を実現するためにはどのような、ビジネス・エコシステムを構築しなければならないか。
Ⅱ.そのエコシステムはどのようなプロセスで、どういったステップを踏むか。
Ⅲ.そのプロセスを実際のシステムにどう実装するか。(ここで初めていわゆる「システム」の話になります)
という順番で考えます。
また弊社では、このためのフレームワークを開発しましたが、これが「ICONIX for Business Design」です。

ICONIX for Business Design

 
 

4.運用と評価の手法と基準を定める

DXは、「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、」導入するものですから、必然的にアジャイルで運用します。
また、評価に関しても今までのようにどれほど「当初の計画通りに進んだか」ではなく、「環境の破壊的な変化」にどれほどうまく対応しているか。顧客や市場に寄り添えているかということを評価の基準とします。

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