「二ホンザルの生態」。古い本(1982年刊)ですが、とても面白い。

猿の群れには、ボス制度や序列(つまりピラミッド組織)があるもの、という常識(?)がこの本を読むと間違いであることがわかります。

私たちが「序列」と思い込んでいたのは、「多様性」の表現に過ぎない。
猿のエサは木の芽や皮、木の実や草、昆虫など様々です。どこで何を取って食べるかも様々。そしてどんなエサを食べるか、地上のエサを食べるのが好きな奴もいれば、高い枝の上でエサを取るのが得意な個体もある。
そして、猿はそれぞれの得意分野を自然と譲り合う形になります。だから厳しい自然の中でもエサを取りつくすことなく、平和に仲良く暮らしているのです。本来は。

ところが人間による「餌付け」という行為が彼らを変えてしまった。(本当は変わってないのだけど。)
何しろ人間が与えるエサは美味しくて栄養価も高いので、みんなそれを食べるため決まった時間に一箇所に集まるようになる。そうすると、「人からエサをもらうのが得意な個体」の順番が自然とできる。これが我々が「序列」と名付けているものの正体のようです。

実際に動物園などで、どうやって「序列」を測っているかとゆーと、2匹の猿の間に1つのエサを置いて調べるそうです。そうすると、最初に片方が取って、もう片方がそれに譲るという反応を示す。これを「強い猿」「弱い猿」の基準とするそうです。

だから「ボス猿」というと、ドラゴンボールとか柔道金メダルのように、戦って勝ち取った地位というイメージがあるけど、何のことはない、「人間が与えたエサに対する反応の閾値」の差、アリや蜂など社会的昆虫が持つ性質と同じものだった。

猿の場合、群れの力関係、つまり「強い猿」かどうかは、個体の大きさなどのほか、年上かどうかも基準です。
野犬などに群れが襲われたとき、大人の雄サルは、周りの子ザルや雌ザルを身を挺して守る行動をとります。

敵と戦いはしませんが、しんがりとなって、敵に威嚇をしながら逃げるのです。

つまり自然と子ザルは大人ザルを頼るようになる、このような「頼り頼られる」関係から「年上ザルへの尊重」という行為が見られ、私たちはそれを「序列」と判断するわけです。

つまり「序列(にみえるもの)」も生物が本来持つ環境適応状態の一形態に過ぎないともいえるワケで。

ティール組織とか自然経営を研究している自分でさえ、群れ(組織)を階層化するのは猿や人など高等動物の知恵なのかと思いこんでましたが、どうやら必ずしもそうとも言えないみたいですね。

この考え方を応用すれば、自律型・自己組織化経営が必ずしもフラット型組織とは限らない。企業はすべて「ティール」「ホラクラシー」にすればいいというワケでもないということになります。

その中でティールに向く企業形態、ピラミッド構造が向く形態、その中で自律・自己組織化を為す方法など組織運営にも応用できそうです。