企業から個人事業主まで広がるサブスクビジネス

サブスクリプション(サブスク)ビジネスとは、月額会員制など定期的な課金の仕組みで収益を上げるビジネスモデルです。

ベイカレント・コンサルティングの予想では、国内BtoCとBtoBサブスクリプション・ビジネスの市場規模は、2023年には6兆円に達すると予測しています。現時点では動画や音楽配信が多くを占めており、その他の分野はこれから参入しても収益拡大のチャンスが十分見込まれる魅力的な市場と言えるかもしれません。

企業だけでなく、個人事業主もサブスクのビジネスモデルに興味を持っている人が多いようですね。自分が持っている技術やノウハウを売り切りではなく、安定的に収益が入るようにしたい、顧客と永く付き合えるビジネスモデルを構築したいという理由だと思います。

一時期流行した「協会ビジネス」などもこのサブスクリプション(サブスク)ビジネスに入るでしょう。
「協会ビジネス」とは「講師ビジネス」がその典型ですが、これは技術やノウハウを持っている人が講師を育成して、その技術・ノウハウを教えられる人を増やしていくビジネス形態です。
講師は、技術やノウハウ、ブランドなどを使用する対価を協会に支払います。講師が増えると協会は安定的な収入を得られるという仕組みです。

サブスクビジネスは意外とハードルが高い

サブスクリプション(サブスク)ビジネスは、ユーザーからみると、一度に支払う料金が少なくてすみ、事業主側も安定的な収益が見込まれる、Win-Winなビジネスモデルといえます。また協会ビジネスも仕組みを創ってしまえば、安定的にビジネスを回すことができるように思えます。

このように、一見とっつきやすくみえるビジネスモデルなのですが、実際の成功事例は、まだそれほど多くはありません。
大手企業でも、ZOZOやAOKIが、アパレルやスーツの月額課金というビジネスを始めて注目集めましたが、程なく撤退しています。

またカーシェアリングなど、所有から利用へ転換が進むとみられる自動車業界でも、GMやBMWが月額1000~2000ドルくらいで高級車が乗れるサブスクプランを設定しましたが、採算に乗るようなビジネス構築はできていないようです。

私達の日常に欠かせない「食分野」においても、オイシックスのような成功事例もある一方で、ミールキットや牛角の月額食べ放題プランなどのように失敗、撤退に追い込まれた例も数多くあります。

また多くの個人事業主、特に理美容やダイエット、健康分野をフィールドにしてる人たちが、サブスクリプション・ビジネスや協会ビジネスに挑んでいますが、その中で採算ベースにのるような「成功」を収めた人はごく少数のようです。
 

 

サブスクや協会ビジネスで失敗する理由とは

失敗の理由はいろいろ挙げることができると思いますが、失敗事例で共通するものは「企業や事業主の考えや想いとユーザーとのギャップ」です。

企業や事業主は、「自分の製品やサービスはとてもいい」という前提でビジネスを構築しています。もちろんその自信がなければそもそも始めることもできないわけですが。

しかしユーザーや利用者にとっては、それは数多くの類似品、類似サービスのOne of Themなわけです。もちろんユーザーはその中からあなたの製品やサービスを選んでくれたわけですが、好きな食べ物だからといって年がら年中それだけを食べるわけではないように、独占しきれるものでもないわけです。

また理美容系や健康系、あるいは「ビジネス・お金儲け系」などペイン(課題)の解決を目指したサービスなどでは、事業主は、ユーザーにできるだけ長く利用してほしいと思うものですが、ユーザーはそのペイン(課題)が解決されたらもう必要を感じなくなります。

逆にいつまでもペインを抱えたまま課題解決ができず、使い続ける必要があるのなら、「効果の上がらないサービス」とみなされ、やはり中途で離脱するでしょう。

そのギャップやジレンマを考慮せずに、ビジネスを組み立てている例も、結構みることができます。

要するに、「顧客をできるだけ長く囲い込みしたい」事業主と「できるだけフリーハンドで製品やサービスを選びたい」ユーザーの間には、基本的に意識やマインドのギャップがあるのです。

そこで事業主側は、製品やサービス、ノウハウの情報をコントロールしようとしたり、いろいろな「ルール」「規制」を設けたりしますが、これは却ってユーザーの離反を招く結果となります。

SCPフレームワーク

SCPフレームワークは、サブスクリプション(サブスク)ビジネスの構造(アーキテクチャー)を可視化することで、事業主とユーザーのギャップを認識し、そのなかで有効なビジネスモデルを組み立てるためのフレームワークです。

SCPとは、Supply、Contents、Platformの頭文字を取ったもので、シンプルに描くと下図のかたちになります。下の方が上を支えるイネーブラーの構造です。
 
 

SCPフレームワーク

 
 
真ん中から説明すると、「コンテンツ」は、企業、事業主が持っている技術やノウハウ、事業モデルを指します。
このコンテンツがしっかりしていることが、何より大事です。

ただ、このコンテンツのことだけを考えてもビジネスはうまくいきません。
そのための基盤がプラットフォームです。例えば、技術やノウハウの基盤となる理論、ビジネスを支えるモデル(ビジネスモデル)、SaaSビジネスにおけるサーバやデータベースなどのクラウド・プラットフォームなどです。

そして一番上位の「サプライ」。実はユーザーに販売するのは「コンテンツではなくサプライ」です。ここは解りづらいところですが、これを区別できるかどうかで、ビジネスの成否が決まると言っても過言ではないと思います。

イメージとしては、カミソリのジレットモデルでいう、本体がコンテンツで替刃がサプライと同じ感じで考えていただくのがわかりやすいかもしれません。

コンテンツ、つまり技術やノウハウそのものからお金を取ろうとすると、上述の意識のギャップやジレンマにぶつかることが多いので、コンテンツではなく「サプライ」からお金を取ると考えるのです。

「講師ビジネス」でいえば教材やマニュアルの使用権、セミナーやワークショップメニューなど。他の業態なら「販売」に必要な原材料、あるいはアプリやソフトウェアの利用代などです。
この「サプライ」をどのようにつくるか、そのために「プラットフォーム」をどう活用するか。

「サプライ」「コンテンツ」「プラットフォーム」を一体で考えることで、サブスクビジネスのデザインが可能になるわけです。

「SCPフレームワーク」を活用によって、収益を安定的に上げ、元来の目的のようにサステナブル(持続可能)なビジネスモデル構築を行う。それが本当の意味でWin-Winな事業モデルに繋がるでしょう。


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