ソーシャルビジネスは社会のタグボート

社会貢献とビジネスの両立を図るソーシャルビジネスが注目されています。
2006年にムハマド・ユヌスが設立したグラミン銀行に対し、ノーベル平和賞が贈られたことから社会の認知度も上がり、2008年には日本の経産省から「ソーシャルビジネス研究会 報告書」が出されています。

報告書によれば、日本のソーシャルビジネスの事業規模は2008年時点で、2500億円程度で雇用者数は3.2万人と推計されていますが、東日本大震災などの出来事もあり、現在は大幅に増えていることが推計されます。

なお、ソーシャルメディア先進国の英国では、2008年の時点で、5.7兆円、雇用規模も77.5兆円に及ぶとされており、日本でも今後のソーシャルビジネスに対する認知度が高まると、英国以上の規模に拡大するポテンシャルが存在すると考えられています。

ソーシャルビジネスの役割は、「タグボート」に例えることができるのではないでしょうか?
今の社会の問題点課題点に光を当て、今後の社会という大きな船の進路や道筋を示す。

このようなソーシャルビジネスの役割やその持続可能性を考えることは、「社会の持続可能性」そのものを考えることではないかと思います。
この混迷し先の見えない社会の中で、ますます必要な存在になっていくのだと強く思います。


 

ソーシャルビジネス事業者が直面する課題と支援ニーズ

経産省の報告書では、事業展開上の主要課題として、「認知度向上」(45.7%)、「資金調達」
(41%)、「人材育成」(36.2%)の 3 つが大きな課題となっています。

「経産省」ソーシャルビジネス報告書より

このあたりは、一般企業で言うところの「マーケティング」「ファイナンス」「人材リソース」の問題であり、多くの中小企業の悩みと同じであることわかります。
ソーシャルビジネスもビジネスである以上これらの課題に取り組無必要があります。そしてこの3つの課題は、それぞれ密接に関係している。

認知がされていないから、事業が伸びず資金も集まらない。だから優秀な人材を獲得することも出来ない。だからマーケティングができず認知度が上がらない。
三つ巴のような関係ですね。

ソーシャルビジネスのアドバンテージとは

様々な課題もあるソーシャルビジネスですが、ビジネスモデルとして考えた場合、普通のビジネスと比べて良い点あるいはアドバンテージもあると考えています。

それは「事業目的と理念がしっかりしているところが多い」という点です。

ソーシャルビジネスは、「社会課題を解決する」という事業目的や理念がしっかりとあります。例えばグラミン銀行のように「貧困のない世界を作る」ですとか、環境問題、介護問題、あるいは途上国の人の支援など、事業の目的や理念がしっかりある。

これをしっかりと打ち出すことによって、周りの人の共感を集めることができます。
最近は一般企業でも、経営理念や企業理念の重要性が言われていて、社内で企業理念を決める話し合いが行われたり、外部のコンサルタントに依頼したりする企業も増えています。

多くのソーシャルビジネスでは、この部分はすでに固まっているので、あとはそれをどのように「認知」してもらうのか。そしてそれに共感する人材をどのように集めるか、そしてどのようにして事業を伸ばし持続するための資金を回していくかを考えていくことになります。

資金を回す(循環させる)には、価値を循環させる

おそらく多くのソーシャルビジネス事業者の方は、どうやって資金を回していけばいいかということに課題感を持っているのではないかと思います。

そうなると、「どうやって売上を作るか」「どうすれば補助金や融資がうけられるか」「クラウドファンディングでお金を集めようか」というところに頭が行きがちです。
もちろんこのような戦略を考えることも大事ですが、その前に頭に留めていただきたいことがあります。

「お金のことをいくら考えても、お金が回るようにはならない」

これはもちろん、ソーシャルビジネスだけではなく、一般のビジネスにも言えることなのですが、お金は決してそれ単独では流通(循環)しない、何らかの価値の対価として流通するものなので、まず「価値」をどのように流通させるか、循環させるかを考える必要があります。いわば価値のネットワークづくりを考える必要があります。

逆に言えば、価値のネットワークづくりができれば、自然界における生態系のように自然と循環する。そうするとそれに連れてお金も循環するようになります。

今の社会、あまりにも「お金」を中心に考え過ぎているため、このことを逆に考える人が多く、そのために価値のネットワークや価値の生態系を先に作ることを忘れてしまっている人が多いのではないでしょうか?

価値のネットワーク、価値の生態系の作り方

経済システムにおける「価値」はもちろん人や企業などの組織の間を循環します。
したがって、これらの人(組織)の間で、どのような価値が循環しているのか「可視化」してみることで、ソーシャルビジネスの戦略を立てることが可能になるでしょう。

このような「価値循環を可視化」するフレームワークには、顧客価値連鎖分析(Customer Value Chain Analysis -CVCA-)などがあります。

下図は2000年にアップルが再生を果たし、後のiPhoneにつながる、iPodの価値循環のモデルをCVCAで表したものです。

MP3プレーヤーとしては、当時はすでに後発のiPodというデバイスを、音楽ビジネスの価値循環の端末と位置づけることで、当時のレコードやCD中心のモデルに革命を起こして、のちのiPhoneの価値循環モデルの原型を創りました。

アップルのCVCA


 
1990年代には、倒産寸前だったアップルが10年後には時価総額で世界一の企業となった一番の源は、ジョブズが頭の中にこのような価値循環モデルを形作ったことにあります。

社会貢献とビジネスの両立~ソーシャルビジネス・ワークショップ

このような価値循環モデルの作成を始め、ソーシャルビジネスの持続可能なものにするためのセミナー(ワークショップ)を2月12日(金)に行います。

起業や副業で社会貢献やソーシャルビジネスにご関心ある方、お気軽にご参加ください
 
社会貢献とビジネスの両立~ソーシャルビジネス・ワークショップ