「儲かる企業」の構造変化

6月12日の日経新聞に、「稼ぎ頭5年で12業種交代」という記事が掲載されました。
サブタイトルに「純利益の一番企業はマーケティング上手」「18年度純利益首位 サービスの巧拙が左右」とあります。

記事によれば、日本企業の稼ぎ頭が入れ替わっているようで、業種ごとに2018年度の純利益のトップを5年前と比べてみたところ、日経業種分類の36業種のうち、機械やそのほかの製造業など12業種で交代したそうです。
新たにトップになった企業には、事業環境の変化に柔軟に対応し、サービスの「仕組み」を作った企業が目立ちました。つまり、よい商品やサービスを提供することは当然として、マーケティングの巧拙が業績を左右しているそうです。

例えば、18年度に「機械業種」で首位に立ったのはコマツ(5年前は2位)ですが、建設機械にGPSを取り付け、販売した建機がどこで稼働しているか通信衛星で把握する仕組みを世界に先駆けて作りました。
それにより、ITを活用した建機の管理サービスという収益を得ることで、競合と差をつけ、5年で純利益を1000億円積み増したそうです。

「その他製造業」で首位に立ったのはゲームやおもちゃを製造するバンダイナムコホールディングスです。
この会社も儲かる仕組みを作っています。バンダイナムコの有名な商品にアニメ「機動戦士ガンダム」の関連商品がありますが、このガンダムが初めて放送されてから、今年で40年になります。
このアニメを見て育った世代が購買力を持ち、プラモデル(いわゆる「ガンプラ」)などの売り上げは右肩上がり。日本だけでなく人口の多い中国でも長年にわたって放映する地道な種まきが収穫期に入り、この5年で純利益を2.5倍に高めました。

また世の中の変化を見据えて日水などを抑え水産業種で首位となったのは、マルハニチロです。働く女性や共働き世代の増加で食の「時短志向」が強まり、缶詰需要が高まってきたことに対応しました。

業種別で首位を堅持した企業もまた「儲かる仕組み」を持つ会社が目立つそうです。
自動車で不動のトップを守るトヨタ自動車は、CASE(Connected、Auto、Sharing、Electric)と呼ばれる技術革新の荒波の中でも、巧みな提携戦略を展開して収益力を高めています。

一方で、市場変化にうまく対応できずに順位を下げた企業も多く、富士通やNECなど電機業界の会社が目立ちます。
日本では今まで、「いい商品やサービスを提供すれば売れる」といういわゆるものづくり神話がありましたが、この発想が通用するのは右肩上がり経済の時だけです。この記事では「製造業もサービス業もマーケティングの力が一番の条件と言えそうだ。」という言葉で結ばれています。

「マーケティング」という言葉も「市場調査力」など様々な意味で使われますが、ここでは記事でも何度か使われている「儲かる仕組み」を作る力を「マーケティング力」ということができると思います。

間違いがちな「儲かる仕組み」

ここで多くの企業で間違ってしまいがちなのが、「儲かる仕組み」と「儲かろうとすること」をごっちゃにしてしまうこと。

日経紙面のちょうど同じページに、レオパレスの記事も載っていて、「自社物件を売却へ」という見出しがありました。
施工不良のアパートの修繕費用に備えるため、自社で保有する賃貸マンションなどを売却(簿価140億円)するという記事です。
レオパレスでは「儲けを出す」ため、壁を薄くしたり、建築基準法で定められた防火壁を設置しなかったりなど、工費を節約して利益をねん出してきました。そのことが最近発覚し大きな問題となったのはご存知の通りです。

このような違法行為は問題外ですが、企業活動で「儲かろうとする」とすることは、結局負の効果しか得られないことは強調しておきたいと思います。

社員にノルマを課す、値上げや値下げで売り上げや利益を伸ばそうとする、商品やサービスの実力以上のものを広告やブランド戦略で得ようとする。
経営者が「儲かろうとする」ために上記のようなことを考えるケースは多いと思いますが、一瞬はともかく、すぐに息詰まることは、因果ループ図を描いてみればすぐにわかるかと思います。いずれも自己強化ループとバランスループがあって、これが「副作用」となって成長にストップをかけるからです。しかもそうなった場合、今度は自己強化ループが「逆回転」する効果をみせますので、単に成長が止まるのではなくスパイラル的に「縮小」するのです。


CVCAで「儲かる仕組み」をデザインする

経営者やマネージャーのやることは、「儲かろうとすること」ではなく「儲かる仕組みを作ること」

そのために是非覚えるべきなのが、システム思考の代表的ツールである、上記の因果ループ図とCVCA(顧客価値連鎖分析)です。

CVCAを活用することで、「儲かる仕組みづくり」を構築することができます。また因果ループ図は、その仕組み(システム)に問題があったとき、どこに問題があるのか、どう対処すればいいのかそのレバレッジポイントを教えてくれます。

日経の記事にあったコマツ、バンダイナムコ、マルハニチロの「儲かる仕組み」についてCVCAで描くと下記のようになるでしょう。

コマツのCVCA

コマツのCVCA

バンダイナムコのCVCA

バンダイナムコのCVCA

マルハニチロのCVCA

マルハニチロのCVCA