Googleはまだ創業20年足らず

インターネットの世界は勿論、世界中の知を貪欲に収集するGoogle。
この会社の設立は、1998年。設立してまだ20年にもなりません。しかし数千億にものぼるインターネット情報をすべてデータベース化し、それどころか、人工知能、自動運転技術などの分野にも進出しているのはご存知かと思います。

そして、一般にはソフトウェア企業と思われていますが、世界最高級のコンピュータや最先端の半導体チップも製造している企業であることは、あまり知られていません。(外販はしていませんが)

Googleは何の会社?

「Goggleは何の会社?」こういう質問をされたとき、多くの人からは「検索エンジンの会社」という答えが帰ってくると思います。
しかし、googleは、検索エンジンの利用者から1セントもお金を取っていません。
それどころか、メールや高性能のウェブ分析ツール、動画の配信も無料で利用ができます。

では、どこから売上を上げているかというと、「広告」です。
検索エンジンで検索されたワードに関連する広告を表示して、それが表示されたり、クリックされたりする回数ごとに課金されます。
クリックの単価は、「入札」で決められて、低いものは数円、入札者が多いワードだと数百円から数千円というものもあります。

だからトヨタの例にならえばgoogleは、「広告を売っている会社」が正解となるかもしれません。
しかしこういったビジネスモデルは、Googleが最初ではありません。TV局(民放)やフリーペーパーなどにも見られるモデルです。

Googleのビジネスを因果ループ図で描いてみる

Google経営

Googleの収益モデルについては、因果ループ図にしてみるとわかりやすいと思います。
Googleは検索エンジン企業としてはYahoo、Infoseekなどより後発組の企業ですが、その高い検索エンジン技術で、シェアを伸ばしました。

他社との差別化として、Yahooなどが、自社コンテンツを充実させたのに比べ、あくまで検索エンジン技術のブラッシュアップに努めました。
今では世界の9割のシェアを握っていると言われています。
そして、検索エンジンの利用者を増やした(媒体価値を高めた)上で、検索エンジン広告に絞って、収益化に努めました。

検索エンジン広告は、顧客が表示またはクリックすると、その単価(数円~数百円)に従い支払いが発生します。
個人や中小企業から大企業まで、対象の間口がひろく、成果報酬ですので、企業側にもメリットがある。広告費は売上高に応じて増減することが可能です。
世界に無数のクライアントがおり、広告売上は、電通など世界規模の広告代理店の売上を遥かに凌ぎます。

Googleは、その利益を、検索エンジンの性能向上に当てて、ますます顧客を集めて、媒体としての価値を高めます。
検索ユーザーの増加が、広告主の増加、広告費の増加に結びつく。

自己強化ループが2つあるこのモデルは、プラットフォーム・ビジネスモデルと呼ばれています。Googleの他、FacebookのようなSNS運営企業もこのモデルです。

Google型ビジネスモデルの落とし穴は?

顧客が顧客を呼ぶ無敵とも思える、Google型のプラットフォームモデル。
実際、ネットバブル時には、このようなビジネスの企画書をもったネットベンチャーが多く出現し、実際ベンチャーキャピタルから多くの資金を得ていました。
しかし壮大な計画を残して、多くの企業が姿を消しました。
どこに問題があったのでしょうか?

自己強化ループが思ったようにうまく回らないときは、どこかでバランスループが働いていて、それにブレーキをかけています。
Googleのビジネスモデルの肝は検索エンジンの質です。
そしてそのためには、絶えず質を上げる努力をしなければいけないのです。

たとえば最近、あるキュレーション・メディア(いわゆるまとめサイト)が、ライターを雇って、他のサイトの情報をパクったコンテンツを大量にアップして検索上位を狙ったことが問題となりました。Googleはすぐに検索エンジンのアルゴリズムを修正して、そのようなサイトが上位にならないようにしました。

これは日本の事件ですが、このようなことにたいし、世界中で対応しなければなりません。
そのためには資金は勿論ですが、最高の技術、そして最高の人材が必要です。そして経営陣は失敗を恐れず大胆に投資をしていかなければなりません。

プラットフォーム型のビジネスモデルには、システム原型の「成長と投資不足」のループが常にあるのです。
成長と投資不足

一度立ち止まってしまったら、自己強化ループはあっという間に逆回転します。特にGoogle型の企業はそれが顕著です。Google以外の検索エンジン会社、Facebook、Linked In 以外のSNS運営会社が現在どうなっているか考えればすぐに分かるでしょう。

プラットフォーム型の企業は、多数の顧客(無料顧客含む)からのアクセスを前提にしているので、それを遅滞なく受けるサーバ等の装置の開発や技術は、ビジネスが拡大するにつれ、非常に負担が大きくなります。普通の企業で、経営資源(十分な資金・人材・装置等)すべてを揃えるのは容易ではありません。

システム思考で見えるGoogleが、自動運転車に進出する理由

Googleは、検索エンジンだけでなく、多くの分野に進出しています。スマホやタブレット分野でAndroidにお世話になっている人は多いでしょう。
今では世界市場の7割以上を抑えていると言われるAndroidですが、Googleはスマホメーカーからは、1ドルもお金をもらっていません。

無料でビジネスが成立する理由は、これも広告モデルだからです。

アンドロイドモデル

もちろん、Androidを利用した人が全員Googleの検索エンジンを利用するとは限りません。
Yahooなど他社のブラウザを使う人も多いでしょう。
だからOSの開発ではなく、chrome(ブラウザ)の開発に絞って、OSは他社に任せたほうが効率的という考え方もあると思います。
しかし、彼らは、費用をかけてでもOSという根幹を押さえることを選びました。

そればかりか、Googleは、自動運転車など、一見検索エンジンとは何の関係もない分野にまで進出しています。
もちろんこうした分野でいまのところGoogleはまったくお金を稼いでいません。
このことは株主からも批判を浴びています。せっかく広告で稼いだ利益を、まだ収益モデルすら確立していない分野に湯水の如く無駄なお金を投資していると。

しかしGoogleの経営陣はそうは考えていません。

システム思考で考えれば、その秘密がわかると思います。
その答えは「人工知能(AI)」です。

検索エンジンも、昔は、テキストマッチング技術だけでしたが、今や画像検索・音声認識など、AI技術がかなり使われるようになりました。
今でもユーザーの検索履歴などが検索結果に反映されるようになってきましたが、そのうち検索したい人の心を読み取って、一人ひとり適切な情報を表示するようになるでしょう。

そのためには、ユーザーの行動履歴から適切な情報を収集する技術やそれを学習して正しい判断する技術などの人工知能の制度を上げる必要があります。

それは自動運転技術とも通ずるとことがかなりあります。
そしてロボット。これにはもちろん、自動運転と同じ人工知能技術が必要ですが、これらを動かすためにはOS技術も必要です。

そしてGoogleはベーシックな部分で、AndroidというOS技術をすでに持っています。
OSの技術、人工知能技術、そして検索マッチング技術は、すべて一体となって、それぞれビジネスにつながるとともに、Googleの検索エンジン技術の性能向上にも欠かせないものです。

Google経営の秘密

これを「検索エンジン技術」ということだけで、必要な投資を行っていたら、おそらく広範囲お知識を持った優秀な人材を集めるのは難しかったのではないでしょうか?
システム思考で考えると、バランスループを常に回しつづけるのは、困難を極めます。ここにあえて、人工知能⇔自動運転技術という自己成長ループをつけて、このバランスループを常に回し続けるようにする。

それが常に成長を続けるGoogle経営の秘密です。

一見、つながっていないところで、実はつながっている。
それを見抜くシステム思考は、目先の課題解決だけでなく、新たなビジネスモデル開発には欠かせない思考法であることが、Googleをみるとよくわかると思います。

日本能率協会主催「DX時代に求められる「3つの思考法」入門セミナー」開催