システムとは何か

システム、というとコンピュータシステムとか統制が取れているような状態をシステマチックと呼んだり、マンションなどで作り付けの台所を「システム・キッチン」などと紹介したり、いろいろ使用されていますが、そもそもどういう意味でしょうか。

システム・エンジニアリングの分野の世界的な組織である「The International Council on Systems Engineering (INCOSE)」が刊行している「INCOSE HANDBOOK」によると、システムの定義を次のように定めています。

「「システムとは、定義された目的を成し遂げるための、相互に作用する要素(element)を組み合わせたものである。これにはハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、人、情報、技術、設備、サービスその他の支援要素を含む。」

つまり「目的」があって、その目的を達成させるための「要素」があるものが「システム」ということになります。ただし要素が一つだけでは、相互作用や組み合わせはできないので、複数の要素が必要です。
例えば繁華街の「人混み」。人という要素がたくさん集まっていますが、共通の目的もないですし相互作用もしていませんので、これはシステムではありません。しかし、同じ会社の社員の集団であったら、会社の行事遂行等の「目的」があり社員同士「相互作用」していますから、これはシステムということになります。

人間関係というシステム

「人間の悩みはすべて対人関係のである」と言ったのは心理学者のアドラー。
人間関係とは、「人間(要素)」「関係(相互作用)」ということです。
この人間関係が、夫婦や親子、兄弟姉妹であれば、「健康で明るい共同生活の維持」とか「教育」等を目的とする「家族」というシステムですし、同じ会社や組織の同僚、地域社会としての仲間同士などそれぞれ「目的」を持つシステムです。

ビジネスというシステム

「ビジネス」というものも、まさにシステムとして考えなければいけないことがわかると思います。
そもそもビジネスは「人間関係」というシステムの上で成り立っているのですが、「ビジネス」は様々な要素の集合体であり、それら要素の複雑な相互作用の上に成り立つものです。経営陣、パートナー、顧客、競合企業、商品、お金、情報などなどすべてが相互作用する要素。
地域社会や最近では地球環境もビジネスに密接に関係する「要素」となっています。

現代の社会が色々ムズカシイのは、今の「システム」がより複雑だから

「今の社会はかつてないほど複雑である」とは、いつの時代でもよく聞く表現ですが、交通手段、通信手段、特にインターネットが日常生活にも入り込んだ2000年以降、加速度的に複雑さが増していることを多くの人が実感していると思います。

要素の数が増せばその相互作用する要素感のつながりも増えていきますが、その増え方は比例ではありません。
2人の間のつながりの数は1つですが、5人との間のつながりでは10個、10人では45個、100人では4950個ものつながりが相互作用するシステムということになります。

村上春樹は小説「ダンス・ダンス・ダンス」の中で、当時(1980年代)の社会構造を、高度資本主義社会として「1969年はまだ時代は単純だった。機動隊員に石を投げるということだけで、自分を表現できた。でも今では社会は何重もの網が入り組んで、投げた石はカーブして自分のところに戻ってくる」と表現しています。
これは30年以上昔の話になるわけですが、今ネットで「ブーメラン」(相手を批判したつもりが自分のところに帰ってきて自分が炎上してしまう)という言葉が使われるように、ますます複雑なシステムの中を私たちは生きていかなければなりません。

100年以上も前に唱えられたニューソート(異端のキリスト教)の時代には、「強く願えば社会システムが(自分に都合よく)引き寄せられてくる」ということももしかしたら頻繁にあったのかもしれませんが、今の複雑な社会相手では願うべくもありません。
(こういう時代だからこそ、単純な原理に、つい人は惹かれてしまうのですが。)

システム思考を理解しよう

あなたの夢や目標が、「ビジネスで成功する」「人間関係をよくする」「人以上にお金を稼ぐ」といった社会システムに関することであれば、その「目的」を達成るためしなければいけないことは、「要素」とその要素間の「相互作用」を理解し、その目的に沿う形で、要素を組み合わせること。であることがわかるかと思います。

社会などの物事を「システム」として理解することを「システム思考」といいます。
システム思考を身につけると、社会の複雑な構造を理解して、目的を成し遂げたり、問題や課題の解決に導いたりすることができるようになります。
下図はシステム思考で使用される、ストック&フロー図、因果ループ図の例です。ストック&フロー図では、要素の間の物事の流れ、因果ループ図では要素間の因果関係を表しています。アメリカでは小学校の授業でも使われるレベルですが、これだけで、世の中の複雑な仕組みを理解し、どうすれば解決策に導くことが可能になります。