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一人でできるデザイン思考ワークショップ

もう4年以上前ですが「一人でできるデザイン思考ワークショップ」という記事を書いて、結構今でも閲覧されています。
今回の記事は、このテーマのいわば「バージョン2」です。

当時との違いは何と言ってもChatGPTを始めとする生成AIの発展と普及です。今回の「一人でできるデザイン思考ワークショップ」では、ChatGPTを活用して、グループワークショップと近い効果がでるようなプログラムについて述べてみたいと思います。
 

前提となるデザイン思考の知識

デザイン思考についての様々な知識については、当ブログの記事を読んでいただければと思いますが、ここではダブルダイヤモンドについて紹介したいと思います。

ダブルダイヤモンドとはロンドンを拠点とするデザイン協議会(Design Counsil)が2004年に発表したデザインプロセスです。


  
    
直感的思考と分析的思考、つまり思考の発散と収束を繰り返しながら創造的問題解決を行う考え方です。

発散と収束の繰り返しで創造を行うというのは、デザイン思考ばかりでなく、ダーウィン進化論や心理学、経営学など様々な分野の創造や創造性の仕組みで見られます。

生成AIなど人工知能分野でも、順伝播と逆伝播という発散と収束の繰り返しで生成や創造を行っています。


  
     
したがって、ChatGPTなど人工知能を活用して、デザイン思考プロセスを創ったり、アイデア創造やイノベーションに役立てるのは自然な考え方と思います。

ただし注意点として、「ChatGPTでアイデア創造」といった課題で、すぐ思いつくのが「◯◯について良いアイデアを出して」とプロンプトに入れることだと思いますが、もちろんこれでもいろいろなアイデアは出してくれますが、正直「本当にいま必要な課題解決手法」を出してくれるわけでは無いことが多いです。

ChatGPTに「生成AIを活用した今までにないビジネスアイデアや課題解決法を出してください。」と「お題」を出してみましたが、答えは正直「悪い答えではない」「普通」のレベルですよね。

普通というか、ありきたりなお答え・・・・

    

ChatGPTは、大規模言語モデルといういわば「専門家の集合知」を基にしています。したがって及第点のアイデアを出すのは得意ですが、これでイノベーティブなアイデアを出すのは簡単ではないのです。

「専門家の集合知」では、「正しい」=「ありきたりな」アイデアが出がちなのは、ハーバード・ビジネス・レビューの論文からも明らかになっています。
多様性な集団、例えば素人が入った集団のほうが、くだらないアイデアも多く、全体の平均レベルは下がるのですが、中には「専門家でも思いつかないイノベーティブなアイデア」が出やすい傾向にあると言われています。

Lee Fleming, Harvard Business Review, Vol.82,Issue 9, Sep2004

     
     

ChatGPTでブレインストーミングを行う

ChatGPTでブレインストーミングを行うときは、直接答えを聞くような質問をするのではなく、「プロンプトエンジニアリングは「エンジニアリング」であるのが鍵」や「ChatGPTのCOT(Chain of Thought)とTOT(Tree of Thoughts)プロンプトの解説」の記事で解説したように、段階的なプロセスを踏むようにします。

実際TOT(Tree of Thoughts)プロンプトは、デザイン思考ととても相性の良いフレームワークだと思います。

先程の「生成AIを活用した今までにないビジネスアイデアや課題解決法を出してください。」の場合、「何のためにこのアイデアが必要なのか」をまず考えます。
例えば、「人間が今まで行っていた業務の代わりをAIに務めてもらいたい」→「人の弱いところを補完してほしい」というのが理由として挙げられたとします。

ここでは一例として「『人間て、こういうとこ駄目だよな』と思ったことや経験。」としてどうかというテーマで考えます。

これをChatGPTでブレストしてみましょう。

1分足らずで、100個のアイデアがでました。

これを「親和図法」を使って、10程度にまとめてみます。

個人的には、「未来の航路を設定」という言葉が気になりましたが、ほかにもまとめ方やタイトルの付け方もいろいろできますので、何回も繰り返してみましょう。

「デザイン思考セミナー」などに参加されたことのある方はご存知のように、ブレスト→親和図法を始めとする「発散」→「収束」プロセスを1、2回やって次のプロセスに行くという形で行われますよね。これは時間に限りのある「セミナー」という性格上仕方のないことですが、実務では何度も何度も繰り返さないと、良いアイデアは生まれません。

その点ChatGPT相手なら時間もかかりませんし、(人間と違い)何回でも何十回でも文句も言わず相手してくれます。


    
     

   
    

ChatGPTでアイデアをまとめる

そして、自分がしっくりくるものがあったら、さらに共通項目や共通する文章、単語などに注目します。ChatGPTは文章や単語を「Attention」という仕組みで生成しますが、ここでは、自分にとっての「Attention」を探すのですね。

これも何度か繰り返すうち、「成長」というキーワードが出てきました。


    
   
ここで、「成長」を目的とした、先程の「未来の航路を設定」する生成AIツールのアイデアをChatGPTに訊いてみます。
   

    
    
「FuturePath Navigator」なかなか格好いいですね!

仕事や生活で迷いがあるとき、目標を見失いそうになったとき、AIがナビゲーションしてくれるシステムです。
他人(親や先生、社会人なら会社やクライアントなど)が決める目的や目標ではなく、自分自身の思考や行動を機械学習して設定されますから、一人ひとりに最適化されて、状況に応じ絶えず修正し続けていく「人生ナビ」。
創ったら売れるかも・・・少なくとも自分はほしい(笑)

もちろんデザイン設計もChatGPTが行ってくれます。
   

     
    
話題の新機能「Code Interpreter」を使えば、プログラムも書いてくれそうです。
後ろで動いているPythonのtkinter機能など使えば、プロトタイピングまですぐにできるかも。
(Code Interpreterについては、後日また解説したいと思います。)

今回の記事ではChatGPTとデザイン思考のメソッドを使って、課題解決やビジネスアイデアを出すプロセスを解説してみました。

時間もかかりませんし、有料版掲載のCode Interpreterを除けば全て無料でできる。 是非活用されることをおすすめします。


日本能率協会主催「デザイン思考セミナー」開催