任天堂から3月に発売された「あつまれどうぶつの森」の売れ行きが凄いようです。
外出自粛で家にいる時間が増え、友達に会ったり遊びに行くこともままならない。そんな世の中にピッタリのゲーム。
ゲームソフトはもとより、コントローラーのSwitchも品薄になっているようですね。
この「あつまれどうぶつの森」(あつ森)というオンラインゲームは、自然豊かな無人島に住んで、そこに家を立て暮らしていくというゲームで、そこに友だちを呼んで交流したり、四季折々の自然を堪能したり、家をつくったり、島を開発したりするのに必要な経済活動を行ったりと、「ほのぼのとしたサバイバルゲーム」という感じでしょうか。子どもたちだけでなく、20代~30代の女性層を中心に、日本だけでなく世界中でヒットしています。
子どもが勉強そっちのけで「あつ森」に熱中しすぎるので、「ゲームばっかりやってないで勉強しなさい」と怒るお父さんお母さんも多いかもしれません。
しかし、これほど人々を画面の前に夢中にさせる「あつ森」。今多くの企業や学校で苦心している「テレワーク(リモートワーク)」や「オンライン授業」にヒントになることは多いと思うのです。
みんなが「あつ森」に熱中するのと同じくらい「テレワーク(リモートワーク)」や「オンライン授業」に熱中したら、生産性も学習効果もものすごくあがると思いませんか?
人々が「あつまれどうぶつ森」に熱中する理由とその効能
なぜこんなに「あつ森」人気は高いのでしょうか?
第一に子どもや大人たちの「自主性(自律性)」「創造性」を刺激するゲームだということが考えられます。
ゲームを始めると、まず最初に取り組まなくてはならないのが、自然ばかりで何にもない無人島の開発。
ここに自分がイメージした家や施設を建てていくのがこのゲームの基本です。
まさに「自分がどういう島にしていきたいか」という「構想力」「想像力」そして「創造力」が問われます。
「あつ森」は、他のゲームにあるような「敵を倒す」とか「競争する」ゲームではありません。しかし自分の島を魅力的にしないと、誰も来たいとは思わないでしょうから、「他とは違った魅力」とか「独創性」は必要です。
また、オンラインの交流ゲームですから、「協調性」ももちろん必要です。オンラインで楽しく会話する中で、友達とうまく会話する方法も学べるでしょう。
最近の子供はオフラインよりオンラインのほうが自分を出せる傾向にありますから、そこは変に摘み取るのではなく、いい方向に伸ばしていきたいものです。
また昼夜があったり、四季もあり、夜には「流星群」のイベントなどがあったりしますので、家にいながらにして、「自然と調和」することも覚えることもできます。
「あつまれどうぶつの森」に学ぶテレワーク(リモートワーク)とオンライン授業
「自律的」「自主的」であること
「あつ森」の何が楽しいのかというと、自分で創意工夫して家を立てたり、島を開発していく過程(プロセス)だと思います。
もしこのゲームが、あらかじめ定められた開発計画に沿って、設計図通りの家を建てるとか、施設をつくるというゲームだったらぜんぜん面白そうではないし、ヒットすることもなかったでしょう。
失敗もしながら、試行錯誤を重ねていく。一見無駄な作業に人々は熱中し、結果創意工夫も生まれ、思いもしなかった面白いものができたりするわけです。
上司が目標やタスクを与え、社員はそれに黙って従いノルマを果たす。あるいは教室での対面授業そのままに一方的に教師が話し、それを生徒はひたすら覚える。
それをそのまま「オンライン」で行ったら、生産性も能率も下がるのは当然です。
一人ひとりが工夫できる。自律的に判断でき、それが仕事や学習にも反映される。そうなって初めて「達成感」も感じられ、モチベーションも高まります。命じられた作業を(監視されながら)行うような「1984年」方式は決して目指さないでほしいです。
タスクの詳細をを上(マネージャーや教師)がかっちり定めて下に命じるトップダウンではなく、現場で情勢の変化に合わせながら試行錯誤しながら創り上げていくやり方のほうが良いと思います。
そもそもこれほど社会情勢の変化が激しく先が読めない中で、「年間計画」などなんの意味も持ちません。
不確実な経営環境に対応していくためにも、「アジャイル」あるいは「リアルオプション理論」を活用して、「現場力」を最大限活かす「自律型」の経営や学習のフレームワークが今こそ問われていると思います。
チームによる「ワーク」と「学習」
「あつ森」が単に無人島に家を作ったりするゲームだったらこんなに評判になることはなかったと思います。自分たちでつくった家やお店や島を拠点にして、友達とふれあい交流する機能が特に今の時勢で受けているのだと思います。
最近中国で「あつ森」が発禁になったという報道もありました。
ゲームが「政権批判」の温床になることを恐れての措置とも言われていますが、逆に言えばそれほど「オンラインの交流」が大きなパワーになることを表しているとも言えます。
これを仕事や学習にも生かさない手はないと考えます。
仕事や学習のタスクをバラバラにして、一人で行うよりも多くの人と協調して行うほうが高い成果が出ることは、「ネットワーク理論」が証明していることでもあります。
こちらの記事でも書きましたが、一対一で上司と向き合うような関係は、上司の性格や能力などに依存することになり、望ましくない結果を生むことになりやすく、また孤独な作業は能率が下がることはあれど、それで上がることは(短期的な場合を除いて)無いのではないでしょうか。
いまこそスクラムチームを結成しよう
昨年秋、日本中に元気をくれた、ラグビー日本代表チーム。
「One For All, All For One」の考え方は、個人主義の欧米と比べ日本人にあった考え方です。1986年、日本経済が絶好調の頃、野中郁次郎一橋大学名誉教授らが書いた論文「The New New Product Development Game」は、ホンダ、富士ゼロックスなどがチームで新製品開発を行う原理を明かし、それをラグビーチームに例えて「スクラム」と名付けました。
この論文を基にソフトウェア開発者のジェフ・サザーランドがまとめたアジャイル開発のフレームワークが「スクラム」です。
バブル崩壊後の1990年代、米国流の「個人成果主義」が日本を席巻しましたが、日本がいまだに低迷から脱せられない中、一方の米国では日本に端を発する思想や手法を取り入れながら、GAFAを筆頭とするIT産業を中心に見事に復活を果たしたのは皮肉以外の何物でもないと思います。
スクラムは、システム開発だけでなく、様々なプロジェクトや経営手法(Scrum@Scale)、教育(eduScrum)の分野にも拡がりを見せています。
「スクラム」が教えるリモートワーク(テレワーク)仕事術
今回のコロナ禍を奇禍として、今こそ失われた30年に終止符を打ち、新たな時代を切り開くきっかけとなることを心から期待したいところです。