フレデリック・ラルーが唱える組織の最終進化系としての「ティール組織」。
ティール組織の一形態ともいわれるホラクラシーと合わせ、実践あるいは実践にチャレンジする企業も増え始めています。まだ実践まで至らなくても、検討や研究している会社も相当数に上るようです。
今年(2018年)初めに発売された「ティール組織」は8月現在で3万部5万部を超えるベストセラーとなりいまだ書店では平積みで売られています。
「ティール組織」に関するABD(Active Book Dialog)や勉強会、セミナーなども各地で行われているようです。

ティール組織とは何か

ティール組織とは、フレデリック・ラルー氏が唱えた組織の新しい形です。
ラルー氏は人類の進化とともに、組織形態も進化してきたことに注目しました。
未開の弱肉強食の世界から、統率の取れた軍隊的、独裁的な組織が生まれ、さらに機能的組織へと進化しました。軍隊的(独裁的)組織も、機能的組織も、組織の成員、特に「労働者」と呼ばれた人々たちは機械のように効率的に動くことを要求されました。
この機能的組織への要求から生まれた制度が、機能別役割別の組織(いわゆる部署別の組織)であり、現場と管理(マネジメント)の分離でした。
これらの制度が確立されたのが20世紀初めで、テイラーの「科学的管理法」、メイヨーの「官僚制組織」。つまり部署別組織、階層組織(ピラミッド組織)による管理法が、大規模な人数の組織(例えば日立製作所やNTTは社員数30万人)の管理を可能にし、20世紀の経済発展を支えたのです。

整理すると、有史から近代までの組織形態は、弱肉強食(オオカミの群れ)、独裁制(軍隊)そして機能的組織(機械)へと進化したということです。
ティール組織では下記のようにまとめられています。

RED (オオカミの群れ) 力による支配
AMBER (軍隊) 長期的展望、上位下達、厳格な階級に基づくヒエラルキー
ORANGE (機械) イノベーション、科学的マネジメント、社長と従業員のヒエラルキー

そして21世紀に入って注目されたのが、機械的な組織、社員が歯車となるのではなく、社員のモチベーションを上げることの重要性や社員を大切にする経営です。
まず注目されたのが、ブラジルのセムコ、米国のザッポス、日本では伊那食品、未来工業をはじめとする坂本光司法政大元教授の「日本でいちばん大切にしたい会社」にあるような、社員を家族のようにみる経営でした。
「ティール組織」の分類では
GREEN (家族) 多様性の尊重、ヒエラルキーを残すものの従業員の呼称をメンバー、キャスト等へ

そして、その次の段階として、生命組織を模した「ティール(青緑)組織」へ進化するとしたのです。

TEAL (生命体) 信頼で結びついている、指揮命令系統なくてよい

ティール組織の3つのブレークスルー

ラルーによれば、組織がティールに進化するためには、下記の3つのブレークスルーを経る必要があります。

1.エボリューショナリー・パーパス(進化する目的)
ティールでは組織の目的を「進化する目的」としています。なぜならティール組織は生命体のように進化する存在のため、私たちが成長や状況に応じて目的も変わるように、固定された目的ではなく、進化する目的を有しているという発想です。

2.セルフマネジメント(自己組織化経営)
ティール組織では、社長や管理職などからの命令系統はなく、「エボリューショナリー・パーパス」の実現のため、メンバー全員が信頼と自律に基づいて組織を運営します。
セルフマネジメントの達成には、情報の透明化、意思決定プロセスの現場移譲、人事プロセスの明確化

3.ホールネス(個人としての全体性の発揮)
多くの従業員、労働者は、会社に対して「人格の一部」しか見せていません。会社はお金を稼ぐ場所で、本当にやりたいことは別にあるという人も多いでしょう。「ティール組織」では個人としての全体性を発揮してもらうこと。組織の「エボリューショナリー・パーパス」が個人のそれと一致、あるいは相互作用することが求められます。

ティール組織に進化させるために必要なシステム思考とデザイン思考

ではどうすれば、この3つのブレークスルーが生まれるのでしょうか?
「ティール組織」が難しいのはこの部分です。オレンジまでの組織は、会社に「制度」を導入することで、その会社をコントロールすることが可能でした。
アンバー(軍隊)は、トップが命令を発し、命令に従わないものには罰を与えたり組織から追放するというやり方で組織をコントロールします。オレンジでは「機能」が大切ですので、社員一人一人の役割や機能を定めることで組織を統治します。
そのため様々な「制度」をきめ細かく作る必要がありました。

今ある会社や組織のほとんどが、このオレンジ型であるため、私たちは制度をどうつくるかという考えに慣れすぎています。
しかしこのやり方で、グリーン、特にティール組織を運営することはできません。
例えば今あるティール組織で運営されている会社の制度ややり方をそっくり自分の会社に移設したところで、おそらくうまくいかないと思います。

制度をつくる、仕組みを取り入れる、という時点で、もう「オレンジ」つまり機能的組織の考え方だからです。

組織をティール組織に進化するには、その考え方も進化させなければなりません。
例えば「ホールネス(全体性)」に必要なのは「木も見て森も見る」、システム思考を身に着ける必要があります。
そしてエボリューショナリー・パーパスやセルフマネジメントの実現には、社員を機能的組織のように制度に当てはめるというやりかたではなく、人間中心デザイン、つまりデザイン思考のやりかたで、「組織をデザイン」する必要があります。

制度や仕組みありきではなくて、人ありき。
ティール組織を導入しよう、組織を進化させていこうと考えるならば、システム思考やデザイン思考がどうしても必要となるのです。


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