論理的思考とシステム思考の関係
私たちは「3つの思考法(アート思考、デザイン思考、システム思考)」について、セミナーやワークショップを行ったり、またそれぞれについて大学院や学会などの場で研究を行っています。
一般にはそのほかに論理的思考(ロジカルシンキング)もよく知られ、研修などでも人気があります。
実は「3つの思考」においても論理的思考(ロジカルシンキング)はベースになっている思考法です。もっと正確に言うと「思考(シンキング)=論理的思考(ロジカルシンキング)」のことなので、ある意味当然と言えば当然なのですが。
論理的思考(ロジカルシンキング)について そもそも英語のThinkingは「論理的(ロジカル)に思考する」という意味なので、Logical Thinkingと欧米人に言うと(同義反復?)と思われます。(「あすの明朝」「きのうの昨晩」のような(笑)) 論理的思考(ロジカルシンキング)は、Barbara Mintoの著書「Pyramid Principle:The: Logic in Writing and Thinking(邦題:考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則)」やCritical Thinking(批判的思考)などをベースにして、日本で生まれた要素還元型の思考体系です。 |
論理的思考と「3つの思考」の関係は下図のように表すことができます。
論理的思考は3つの思考のベースなので、これを理解していないと、システム思考やデザイン思考、アート思考を理解するのも難しいのは確かです。
しかしながら、大抵の人(ビジネスパースン)であれば、論理的思考について概念的には理解していると思いますし、実際覚えなければいけない項目はそれほどありません。
論理的思考で知るべき2つのこと
論理的思考で知っておくべき2つの基本事項は「ロジックツリー」と「MECE」です。
簡単に書くとこのようになりますね。
論理的思考(ロジカルシンキング)の基本
水は水素と酸素からなります。あるいは水素と酸素が化合したものが水という概念である、と言い換えることもできます。
この物事とその構成要素の関係を表したのが「ロジックツリー」です。
そしてロジックツリーの構成要素は、「もれなくダブりなく」書かれている必要があります。酸素だけ、水素だけでは水にはなりません(漏れがある)し、「酸素と水素とOxygen」と書いたらダブりがあることになりますね。
この「漏れなくダブりなく」書くことをMECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)と言います。(ミーシーと呼ぶことが多いです。)
例えば、なにか問題が起こったとすると、その問題の原因はなにか、なぜそれが起こったのか理由を考えますが、そのときロジックツリーを適用します。
「その問題が起きたのは、理由1と理由2が要因です。」とか「理由1と「理由2、その2つの理由から、そのプロジェクトは進めるべきという結論になります。」というような使い方をします。(前者を演繹法、後者を機能法ともいいますね)
このようにロジックツリーによって構成要素をMECEに可視化する。つまり入り組んだ問題を整理することによって、問題の原因を特定し解決に導くことが期待できます。
論理的思考の限界
論理思考はある程度入り組んだ問題を整理し、問題解決につなげることができます。しかし事象をロジックツリーに分解できることが前提で、MECEに分けることが難しい問題、例えば様々な人間の利害が絡まっている問題であったり、立場によって見方が変わる問題、一つの課題解決がまた次の課題を呼ぶような問題ではうまく対処することは難しいです。
なぜなら、複雑な問題では、その問題自体を定義すること事態が困難だからです。
例えば、「地球温暖化が問題である」という場合、「温暖化ガスを減らさなければいけない」ということはできても、実際どうすればいいのか解決可能な形での問題定義はとても困難でしょう。
「経費を削減して利益を上げる」とか「人間関係をよくする」という身近な問題についても同様です。
「とりあえず目についたところから始める(コピー用紙の削減!)」や「簡単なところから始める(積極的に話をしよう!)」でもいいのですが、問題の根本解決にはなかなか繋がりません。
一般的に複雑な問題では、目に見える問題事象とその原因とは、時間的にも空間的にも離れていることが多いのです。
問題を構成する要素間の関係性を分析して、問題を生み出しているメカニズムを明らかにした上で、問題の根本原因につい関して策を講じないと、結局は同じ問題が再び発生してしまいます。
この事象と事象の間に潜む因果関係を重視して、問題の本質に迫るために用いられる思考技法がシステム思考です。
そしてシステム思考によって問題の本質が明らかになってはじめて「問い」が有効となります。
この問いに関していわゆるクリエイティブな解決策を提示するのがアート思考やデザイン思考などの「クリエイティブシンキング」です。
これらの関係性は下図のように表すことができます。
問題解決のトライアングル
論理的思考と、デザイン思考やアート思考の関係についてもまた別途述べていくつもりです。
日本能率協会主催「DX時代に求められる「3つの思考法」入門セミナー」開催