幸運はコントルールが可能
システム思考ができれば、「運を良くすること」つまり幸運をつかむことをコントロールすることが可能です。
成功すること、夢を叶えること。
これらには、努力とか才能などが必要ですが、それとは別に「運」が重要なのは、
多くの方がご存知だと思います。
運に関しては間違った考えもかなり行き渡っているように感じますが、代表的なのは次の2つです。
1) 運は人間には、まったくコントロールできない。
2) 運は心の持ちようで、変えることができる。
どちらもまったく間違っているというわけではありません。完全にコントロールするのは確かにできないですし、ポジティブシンキングに代表される「心の持ちよう」で、影響されることも勿論あります。
1と2が結びついたのが、「ニューソート」(異端のキリスト教宗派)が唱えるいわゆる「引き寄せの法則」ですが、これは純粋に宗教の教えなのでここでは除外します。(「ニューソートの教え(引き寄せの法則)」については当ブログの別カテゴリーで解説しています。)
運をつかむために必要なキーワードは、「経路依存性」と「フィードバック」の2つです。
経路依存性とはなにか
経路依存性は、なぜこの世に、物体(例えば人間などの動物、山や川、地球などの天体)が生まれたのかをシステム的に説明するものです。あるいはもっと身近な例で言えば、「なぜ時計は右回りなのか?」「なぜ電気街は秋葉原に集中したのか」「パソコンはなぜ効率の悪いQWERTY配列で統一されているのか」「勝者がすべてを得る、富めるものはなぜ富めるのか?」「アイドル市場で◯◯は△△より圧倒的人気があるのか?」
これらはすべて経路依存性を示すシステムの例です。
経路依存性のシステムの最終状態は、最初の状態と、システム初期の予測不可能なほどの小さい摂動によって決まります。
平野に雨が降った時、その平野が一様に平面であった場合、最初のうち一様に雨水は流れます。しかし、その一様さは、ごく小さなノイズと外的な摂動によって破られます。例えばある場所が他よりもほんの少し地面が柔らかかったとか、動物が歩いて、ちょっとへこんだといったようなことです。
そうすると、正のフィードバック・プロセスが働いて、これらの小さな初期の差異を増幅させ、ついには巨視的な影響の大きさに膨らませます。
いったん支配的な設計や基準が現れると、それを変えることは労力がかかるため、均衡状態が決定づけられます。
地面にできたほんの小さな窪みに雨水が集まり、その力で窪みは深く大きくなる。そうするとますます周りから雨水が集まってくる、そうするとますます地面を削る力が強くなって、窪みはますます深くなる。
あのアマゾンの流れもグランドキャニオンの地形もどうやってできたものです。
最初はどこにできても良かったカッもしれません。でも今からアマゾンの流れを変えたり、グランドキャニオンの地形を変えたりするのは、不可能に近いです。
パソコンのキーボードがQWERTY配列なのは、別に法則があるわけではないそうです。
初期の機会式タイプライターは、あまり早く打つと機械が反応できないため、わざとバラバラの文字配列にしたそうです。実際PCの時代になっても初期の頃はいくつか違う配列のものもありました。しかし大勢がいったんQWERTY配列が大きくなると、いちいちPCごとに違う配列では不便なので、すべてのPCがQWERTYに統一されてしまいました。タイプライターの時代と違って、今では早く打っても何の問題もないのですが、いまさらこの配列を変えることは実際には不可能でしょう。
アメリカの電車の線路幅が144cmなのは、誰かが決めたわけではなく、最初鉄道会社ごとにいろいろな幅があったのが、鉄道網が広まるに連れて、互換性が重要になり、144cmという中途半端な数字になりました。
これもすべて、経路依存性です。
正のフィードバックを起こす
例えば、いまのあなたが、とても良くない状況にあったとします。実は原因をさぐればほんの些細なことなのです。それが正のフィードバックが繰り返され、今のような状況になっているのです。これが。「運が良くなかった。」ということ。
それが反対であれば、「幸運だった」ということです。上記の様々な例のように、私たちは気づかないだけで、多くの「経路依存性」「正のフィードバック」に囲まれています。
それらは絶えず発生と消滅を繰り返しています。
それが大きくなってしまったら、つまり「幸運」「悪運」と認識できるくらいになってしまったら、私たち一人の力で変えるのは非常に困難です。じたばたしても神頼みをしてもどうにもなりません。
だから幸運を起こすには、ノイズを捉えて、正のフィードバックを起こせばいい、ということになります。悪い方向にフィードバックが働き始めていたら、表面化するまでにそれを潰すことです。
ループ図が描ければ、幸運をつかむ事が可能になる
つまり運をつかむ能力は、私たちの周りにある、正のフィードバックを(小さいうちに)認識できるようになる能力とイコールです。
そしてその能力を身につけるには・・・。
システム思考を理解して、因果ループ図を描けるようになること。
これがシステム思考で「幸運」をつかむ方法です。
現在の状況を、因果ループ図を描いて、整理してみましょう。
あちこちで、正のフィードバック(つまり自己強化ループ)が見られるはずです。
それをもっと強化するには、あるいは悪い結果になりそうなら、どうすれば、それをストップできるか。そういう作業の繰り返しが、目に見えるかどうかのほんの小さな流れを、アマゾン川のようにすることもできるようになります。
正のフィードバックを起こすことが、幸運の肝であることはご理解いただけたと思います。
この続きでは、正のフィードバックを起こすもう少し具体的な方法について述べたいと思います。