大学生たちが見た「Sustainable STEAM」のビジョン

昨日、日本STEM教育学会のSTEAM教育SIGで行われた「Sustainable STEAM」のワークショップを行いました。

このワークショップの趣旨は、未来を担う高校生や大学生がこれからの世界を考えイメージしてもらい、そこから未来の世界や環境についてのビジョンを共有し、ディスカッションを通じて、多様な考えや視点を共有することを目的としています。

5月にキックオフミーティングを行い、四日市高校、函館高専、金沢大学の学生十数名と環境問題などサステナビリティな社会について議論を行いました。そこでは、環境問題や水不足問題、ごみ問題などを訴えるアート作品を鑑賞してその意味を考える「対話型鑑賞」を行いながら、これらの問題やその意味について、学生同士話し合う場を儲けました。

関連記事:イノベーションのための対話型鑑賞法(VTS for Innovation)


「水不足と雨」

    


「ゴミ箱」

     
     
これらの絵は「第10回アジア漫画展 アジアの環境問題(2005年)」に出展されたアート作品で、上は孔賢赫(韓国)さんの「水不足と雨」、下は横田吉昭さんの「ゴミ箱」という作品です。

それぞれ環境問題、ゴミ問題を考えさせられる絵ですが、この素材をもとに活発な議論が行われました。
   
    

生成AIで未来を描く対話型絵画法

そして今回は、前回の対話型鑑賞法とは逆のプロセスとなる「対話型絵画法」を行いました。
対話型絵画法は、弊社で開発したアート思考ワークショップで、グループで対話をしながら、各々の想いを統合してアート作品を制作します。

具体的には、グループのメンバーの「言葉」をプロンプトとして、画像生成AI(Midjourney)でその言葉を絵画にします。

学生たちに「2040年の世界はどうなってるか、どうなってほしいか」という話し合い、その中で出た言葉をオンラインホワイトボードのMiroに付箋(※)で貼ってもらいました。そしてあわせて「どうしてそう思うのか」という根拠も合わせて訊きました。

15分ほど話し合ってもらった結果の一部が下図です。

オンラインホワイトボード(Miro)で表された想い

(※)Miroのオンライン付箋の詳しい機能に関しては、Miro公式記事「Miroのオンライン付箋ツール」を御覧ください。
   
    
多くの人々が2040年の未来について考えるとき、高度な技術やAIの浸透、都市の発展などを思い浮かべることが多いです。実際、今回のディスカッションでも「生活へのAIの浸透」などの意見は多く見られました。しかし、その中で浮き上がってきたイメージが「春」と「緑」でした。

最近は気候変動で夏の暑さが注目されますが、春や秋が短くなったと感じる方も多いのではないでしょうか。
大阪から金沢の大学に進学した学生は、金沢の春の美しさについて語ってくれました。

桜の美しさに象徴される、世界に誇る日本の春が失われつつある、これは今最も若い人たちが感じていることなのかもしれません。
生成AIにこれらのキーワードを入れてみると、果たしてこの学生たちの想いが絵という形で生成されました。

画像生成AI(Midjourney)で生成された想い

大学生たちのこのような意見やイメージを見て、2040年の未来に対する彼らの真摯な想いや期待、そして不安を強く感じました。彼らは私たちが考えている以上に、この世界の未来を深く考え、それを大切にしているのかもしれません。

このワークショップを通じて、生成AIを使用して多様な意見や感じたことを視覚的に表現することの意義を改めて感じました。AIの技術は単なるツールではなく、人々の想いや願いを形にすることができる力強いパートナーとして私たちの未来を共に作っていける可能性を秘めているのではないでしょうか。
   
「Sustainable STEAM」のイベントを通じて、未来に対する多様な考えやビジョンを共有することの大切さを再認識しました。そして、技術の進化やAIの活用によって、そのビジョンをより具体的に、そして魅力的に表現することができることを実感しました。これからも、多様な人々の声を聞きながら、より良い未来を共に創造していきたいと考えます。

日本能率協会主催「生成AIを活用したアート思考入門セミナー」