課題解決とシステム思考

私たちは、毎日「課題」と向き合って生活をしています。生活をすること=課題と向き合うこと、と言っても大げさではないかもしれません。
毎朝の通勤電車でどうやったら座って楽にいけるだろうか、から、職場や学校のトラブルの解決、学業あるいはビジネスの目標をどうやって達成するか? いやな上司や取引先をどうやって手なずけるか? 家に帰れば、家族の様々な問題。
もちろん課題は、嫌なことだけではなくて、どうやったらデートがうまくいくか、家族旅行どこにいけばみんなが喜ぶだろうか? といったポジティティブな課題もだくさんあります。
現在のような複雑な社会では、課題は、数学のように答えが一つであって、課題を丁寧に解きほぐせば、その答えにたどり着ける、ということは、むしろ稀です。
いろいろな人の、様々なことが複雑に絡み合い、答えは一つではなく、あちらを立てればこちらが立たず、今日の解決法が明日の問題を生むこともしばしば。

そういう中で、MITのジェイ・フォレスター教授らによって産み出されたのが、システム思考です。

システム思考を一言で言えば、社会をシステムと捉えて、その課題の解決を見つけていく思考法です。

社会とは何か

ウィキペディアによれば、社会の定義を『継続的な意思疎通と相互行為が行われ、かつそれらがある程度の度合いで秩序化、組織化された、ある一定の人間の集合』とされています。

いうまでもなく、人が単に集まっているだけでは、「社会」はできません。
人の集まりが、秩序だって組織化されることによって、社会になります。

そして組織化とは、意思疎通と相互行為が、人と人の間で行われることによって、成り立ちます。
この意思疎通と相互行為、要は人々の間で「相互作用」がある状態です。たとえばAさんとBさんが、街で出会って挨拶を交わしても意思疎通はできますが、それだけでは不十分で、相互作用、「お互いが影響しあっている」という状態が必要です。
親子や夫婦は、たとえ言葉はかわさなくても、離れていても、お互い影響を与えあっています。したがって家族の構成員(要素)の間に、相互作用があり、家族は「組織化された人間の集合」つまり、「社会」です。職場や学校、あるいは地域社会、国家などもそうですね。
またビジネスの場である「市場」も、たとえ相手の顔を知らなくても、ものを買う、お金を払うなど影響を与えあっていて、相互作用がありますので、ビジネスの場(市場)も社会であるのは言うまでもありません。

ところで、「システム」の定義は、「目的を持った、要素と要素の間の相互作用」です。
システムという面から見れば、社会=システムであることが上述からもわかりますね。
それが社会をシステムと捉える、という意味です。

私たちは、『何で』つながっているのか?

私たちは「社会」の中で、相互作用する、影響を与え合うことで、他の人とつながっています。
「影響」には様々なものがあります。例えば、恋人や家族に好意を持つ。それによってその対象に影響をあたえるでしょう。影響を与えられた、相手は何らかの「反応」を示します。
(逆に言えば、「反応」を与えられない、行為は、影響を与えったことになりません)

例えば、あなたの好意に対し、相手も気分良くなって、好意を返してくれるかもしれませんし、逆に嫌悪感をもってしまうかもしれません。
この場合、この好意、あるいは嫌悪感は、あなたと相手の間に与える影響を与えるいわば因子ですが、この因子で、あなたと相手の間はつながっている(相互作用している)といえるでしょう。
そして、この相互作用は、因果関係にあるともいえます。あなたが、好意を示すことによって(原因)、相手も好意を示してくれた(結果1)。あるいは嫌悪感を示した(結果2)

この因子は、家族・恋人の間では、上記のように「好意」あるいは「嫌悪」がありますし、職場でしたら、「指示」「成果」などがありますね。これら因子の繋がりを図示していけば、社会がどうなっているか、今がこうなっている、原因を示すことができるのではないか。そして解決策を示すことも可能になるのではないか。

そうして生まれたのが「因果ループ図」です。

社会システムを表す因果ループ図

因果ループ図は、社会(システム)を構成している相互作用、つまり私たちが、相手にどのような影響を与え、与えられているか。
影響を与えている内容(因子)はどう繋がっているか、因果関係はどうなっているのか、を図示化したものです。
「社会」を構成する個々の「人」は目に見えますが、その繋がりや影響の与え具合は、目に見えません。そこが「社会」を難しくしているわけですが、「その目に見えないもの」を「見えるようにしたもの」が因果ループ図なのです。

私たちは、この社会の中で、何か課題や問題があるとき、つい、誰が原因なのか。を問いがちで、「誰々が悪い」と結論をつけて終わることがほとんどです。
あるいは、うまくいかないときは、「自分が悪い」と結論づけて自身を失ったり、諦めてしまう。

私たちが目に見えるものにしか、対応できないせいです。
因果ループ図は、単純に言えば、目に見えないものを、見えるようにするツール。

だから真の課題がわかり、真の解決法を導くことが可能になります。

課題解決のため、あるいはこの社会の中で、目標を達成したり、夢を叶えるにはどうすればいいかを考える時、この因果ループ図は、非常に強力なツールとなり得ます。