熱意と行動だけでは失敗する理由
夢をかなえるには?目標を達成するためには?
という質問を投げると、たいてい「熱意」という言葉が帰ってくる事が多いですが、次に多いのが「行動」という答え。
昔、高度成長時代と呼ばれていた頃は、この「熱意」×「行動力」が「成功」の公式と呼ばれていました。
その頃のことを知っている人は、今だにそのように言う人も多いです。
日本がまだ若く、欧米の一流国のキャッチアップをすればよかった頃は、とにかく成功者の真似をして、あとはその成功者より少しでも多く行動する。これが成功の秘訣でした。
でも今では、真似をしても2番手3番手どころか、すぐにだめになってしまします。
「差別化」とか「ブランディング」の重要性が言われるのもそのためです。自分だけの個性や特性が出せないと成功は難しいと思います。
正しく設計しない飛行機は飛ばない
システムダイナミクス(システム思考)の生みの親である、ジェイ・フォレスターはしばしばこんな質問を投げかけたそうです。「飛行機の安全な運航において最も大事な人物は誰だろうか?」大抵の人は「パイロット」と答えますが、答えは「設計者」です。
確かに熟練の腕を持つパイロットは重要ですが、どのような状況でも安定し安全な飛行機を設計することが何より重要です。
「でも計画通りに物事は運ぶなら誰も苦労しない」という方も多いと思います。
実際、最初に計画や設計したとおりに物事が進むことはほとんどありません。
失敗してやり直して、の繰り返し。そういう中で熱意や粘り強さや行動力を求められますが、もう少しいい方法はないのでしょうか?
ジェイ・フォレスターは、ロケットやミサイルが、飛んでいる最中、絶えず自分の位置を確認して、予定のズレと目標値を見ながら飛行を絶えず修正し続ける「フィードバック技術」を経営分野に取り入れました。
目標をつくり、工程表を作成してもその通りに進むことはまず稀です。
そういうとき、やる気がない、とか、最初に立てた目標に無理があった、と思いがちです。
そんなところに、夢や目標を諦めてしまう原因があるのですが、誘導ミサイルも、飛行機の自動操縦システムも、気象状況などで、飛んでいるうちにそのままでは、目標がずれていくのはシステム上当然なのです。
それが可能になったのが、ずれを確認しそれを修正するフィードバック技術のおかげです。
システム思考はいわば夢に向かって進む飛行機のの自動操縦装置です。
ただし自動操縦装置を設計できるの技術者は、自分しかいません。パイロットのように、他の誰かが設計してくれた飛行機に乗るという人生は残念ながらありえないのです。誰かの奴隷のような人生を歩みたいというのでない限り。
システム思考が教えてくれるこの自動操縦の設計手法は次のとおりです
(1)問題や課題の明確化
軌道がずれていることを知ったら、何が問題なのか、何故その問題が起きているのかを明確化します。
具体的に、何がずれているのか。その項目(変数)を書き出します。
途中経過で、今までどのような結果が出ているか。そこに特定のパターンがあるか調べます。
(2)問題の原因について仮説をたてる
問題の本当の原因は、その問題点の近くにないことがほとんどです。
直感的には、わからないことが多く、意外なところに、その原因や解決のポイントがあります。
なぜなら、社会システムは様々なところで相互につながっているので、思いもよらない事が原因で問題が起きていることがおおいからです。
そのためには、その社会システム構造の見える化、図にしてみると仮説が立てやすいのです。
システム思考ではそのためのツールとして、以下のものがあります。
・モデルの境界図
・サブシステム図
・因果ループ図
・ストック/フロー図
・施策構造図
(3)仮説を検証するためのシミュレーションモデルを作る
上記の仮説を元にシミュレーションをします。
定量的(実際に数値を入れて予想数値を算出する)シミュレーションには、Vensimなどのシミュレーションソフトが必要ですが、定性的なシミュレーション、因果ループ図を描く形であれば、紙とペンだけでできます。
ジェフ・ベゾスは、ファミレスのナプキンとペンで、あのアマゾンのビジネスモデルの因果ループ図を書いて示しました。
(4)シミュレーションモデルをテストする
様々なケースを想定して、シミュレーションを行って、それで夢や目標がかなえられそうか、シミュレーションしてみます。
(5)実際に設計して評価する
具体的な、設計(ビジネスモデルなど)をおこないます。
実行してみて、課題や問題点、目標との齟齬を感じるようでしたら(必ずあるはずです)、もう一度、最初の問題や課題の明確化に戻ります。
大事なことは、最初に詳細で正確な設計図を作ることではなく、(1)~(5)を回したり、戻ってやり直すということ。
飛行機やロケットが飛行中に絶えず位置を自動的に(あるいは手動で)修正し続けるように、常にフィードバックする。
これが夢への自動操縦の肝です。