デザイン思考の様々なフレームワーク

デザイン思考=「ブレインストーミング(ブレスト)などの様々なフレームワーク」というわけでは決してないのですが、メソッドやフレームワークを身に着ける必要があるのも事実。
もちろんデザイン思考の手法と言われるものはたくさんあり、メソッドやフレームワークを合わせれば、それこそ数え切れません。
慶應義塾大学大学院SDM研究科で編集された「システム×デザイン思考で世界を変える 慶應SDM【イノベーションのつくり方】」では16種類のメソッドが紹介されており、またデルフト工科大学編の「デザイン思考の教科書」には約70種類のメソッドが紹介されています。
ここでは、数多くの手法の中から実際に実践して効果的だと感じた、イノベーティブなプロダクトを生むためのプロダクトデザインの8つのフレームワークと、それを生む組織のための組織デザインのための2つのフレームワークをまとめてみました。
(手法の詳細については、それぞれのリンク先の関連記事をご参照ください。)
 
 

1.IDEOフレームワーク

「共感」「問題定義」「創造」「プロトタイプ」「テスト」の5つのプロセスを描いたIDEO(d.school)のフレームワークは、デザイン思考を俯瞰することができ、何か迷いがあればここに帰ることで、自分の立ち位置を確認することができます。
そして、その根幹にあるのが「人間中心デザイン」であるということです。
どのフェーズであっても人間(ユーザー)中心という視点で考えることが必要です。

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2.KJ法

川喜田二郎東工大元教授によって考案されたKJ法は、後で紹介する「親和図法」のようなデータの整理法と混同されることが多いのですが、これは日本独自の発想法、問題解決手法です。W型問題解決モデルは、IDEOのフレームワークとほぼ同じプロセスですが、実際に観察をどうすればいいか、そして観察したものをどうまとめて仮説を作るか、具体的な手法を示してくれます。
また次のブレインストーミング(ブレスト)で出たたくさんのアイデアを、構造化し創発につなげるのにも威力を発揮します。
ブレストとKJ法をそれぞれ正しく行うことができれば、それだけで目的(イノベーティブなプロダクトを創発する)を達成することも十分可能です。

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3.ブレインストーミング(ブレスト)

ワークショップで「ブレインストーミング(ブレスト)をやったことがある人?」と訊くとたくさんの手が上がりますが、「正しいブレストをやったことがある人?」と問い直すと、多くの人がとたんに不安そうな顔で手が下がります。
米国で広告会社の重役だったアレックス・オズボーンが考案したブレインストーミングは「話し合い」とも「議論」とも違います。

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イノベーション企業IDEOのブレインストーミング(ブレスト)法
 
 

4.親和図法

ブレインストーミング(ブレスト)でたくさんのアイデアを出した後など、多くの切片を分類するときに使用する収束手法です。
1979年に日本科学技術連盟(日科技連)が、KJ法A型を基に「新QC七つ道具」の一つとして紹介した手法です。詳しくは「KJ法」をご覧ください。


 
 

5.バリューグラフ

石井浩介スタンフォード大学元教授が著書「価値づくり設計」(養賢堂)で紹介した手法です。抽象度を上げ下げすることにより、プロダクトの本来の目的や代替え案、新たなプロダクトを考案しやすくする手法です。
やみくもにアイデアを考えるのではなく、「このプロダクトはそもそも何のためにあるのか?」「このアイデアを考える意味とは何か?」とプロダクトの本来の意味を考えることで、本当に価値のあるアイデアやプロダクトを考えることが可能になります。

石井浩介 飯野謙次. 「価値づくり設計」:養賢堂 2008

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6.顧客価値連鎖分析(Customer Value Chain Analysis -CVCA-)

上記の石井元教授やドナルドソンらによって考案された手法です。ステークホルダー(利害関係者)間の製品やサービス、お金、情報の流れ(バリューチェーン)を描くことで、それらがどのようなビジネスモデルでつながっているのか、あるいはどこか足りないところがないか可視化できるメソッドです。
デザイン思考で生まれたアイデアを実際のビジネスに落とし込むのに必須のツールの一つです。
このCVCAから派生したメソッドとして、次に紹介するWCA、そしてCVCAを時間軸、空間軸、意味軸の立体的(多層的)に捉えて、組織デザインツールとして組織の問題点を可視化できるようにした多層CVCA 1)があります。

iPhon,iPodのCVCA

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CVCAで独自のビジネスモデルを構築する

1)関連論文
Seiji Shima, Nobuyuki Kobayashi, Seiko Shirasaka (2018).”A Proposal of Architectural Framework for Self-Organizing Management Utilizing MultiLayer Customer Value Chain Analysis” Review of Integrative Business and Economics Research, Vol. 8(2), 1-13.2018
 

7.欲求連鎖分析(Wants Chain Analysis -WCA-)

CVCAから派生して、人々の欲求の連鎖を可視化することによって、社会の仕組みの分析やデザインを行う手法。企業やNPOなどの組織におけるビジネスモデル・社会システムの分析やデザインのためのツールとして活用ができます。また、次項の因果ループ図を書く前に、このWCAを作成しておくと、スムーズに因果ループ図が作成できます 2)。

Volvic 1L⇒10LキャンペーンのWCA

関連記事
WCA(欲求連鎖分析)でCVCAと因果ループ図をつなぐ

2)関連論文
Seiji Shima, Nobuyuki Kobayashi, Seiko Shirasaka (2018). “A Method of Converting Wants Chain Analysis to System Dynamics for Evaluation of Business Models” proceedings 2018 7th International Congress on Advanced Applied Informatics (IIAI-AAI 2018), pp.700-705, (2018).

8.因果ループ図

世の中のあらゆる事象はシステムとして捉えることができます。システムとはその要素とその相互作用から成り立ちますが、それを可視化したものが因果ループ図です。
正しく因果ループ図を作成することで、問題の本当の原因や問題に対処するレバレッジポイントを見つけ、課題解決に向かうことができるようになります。

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ループ図 (因果ループ図 Causal Loop Diagram)

以上が8つのプロダクトデザインのためのメソッド(フレームワーク)です。ここから組織デザインのメソッドを取り上げますが、その理由は、「組織が変わらなければイノベーションは起きない」ことによります。
デザイン思考のワークショップでイノベーションやアイデアのヒントを得たような気持になり、モチベーションも高まったものの、普段の職場に戻ると、またいつものルーティンワークに戻ってしまう。
そういう職場は多い気がします。組織デザインとプロダクトデザインはセットで行う必要があると思います。
ここで紹介するのはワールドカフェとアプリシエイティブ・インクワイアリーというホール・システム・アプローチとよばれる組織の一体感を高めるためのワークショップ手法です。
 
 

9.ワールドカフェ

1985年にアニータ・ブラウン、デビッド・サックスによって発表された手法です。
共通の問題に対し、グループごとに分かれて討議しますが、一定の時間が過ぎると、一度グループを解体し、他のグループの人と入れ替えを行いながら、討議を数ラウンド続けます。多くの人と交流するとともに「他家受粉」して多様な意見を取り入れることができるダイアログ手法です。
十数名以上であれば何十人、何百人であっても(1つの会場に入れば)行うことができ、それほど準備がいらないので、比較的手軽に行いしかも高い効果を上げることができます。
 
 

10.アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)

米国で当時大学院生であったデビッド・クーパーライダーが1985年に博士論文として発表したのが、アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)です。
現在の姿を肯定的に受け入れて、未来の可能性を探求(インクワイアリー)する手法。「ティール組織」で著者のフレデリック・ラルーは、組織の存在目的(エボリューショナリー・パーパス)のブレークスルーを行うために有効な手法であると述べています。

アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)による組織デザイン
 


日本能率協会主催「デザイン思考入門セミナー」開催


 
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