隕石級のコロナウイルスの衝撃

後世の歴史家は今年(2020年)を、6500万年前に恐竜を滅ぼしたチュクシュルーブ隕石の衝突になぞらえるかもしれません。

当時の生態系の頂点に立ち、この世の春を横臥していた恐竜が滅びたのは、たった(?)直径十キロ程度の隕石が原因です。隕石衝突の直接の衝撃は、ユカタン半島やカリブ海の島々にダメージを与えましたが、その衝突で舞い上がった粉塵が太陽の光を遮り気象が激変したこと(インパクト・ウィンター)で、その変化に対応できなかった恐竜は種の終演を迎えました。

同じように小さなコロナウィルスは、それが引き起こす病気そのものよりも、社会や経済に大きなインパクトを与えています。
各国政府による経済対策は、そのインパクトを和らげる効果はありますが、変化に対応できない企業や組織は、恐竜がそうであったようにいずれ立ち行かなくなるでしょう。

まさに「ダーウィンの名言」のとおり、「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である。」が今ほど響く時代はないのかもしれません。

私たちがビジネス、あるいはプロジェクトを実行するためには、プラン(計画)をねる必要がありますが、その前提には目指すべきビジネスモデルがなくてはならない。
しかし、これだけ社会の変化が激しく、人々の意識も多様になると「一つのシナリオ」「固定化されたモデル」を定めてもその通りに世の中が進むことはまずないですし、かといって「なすがまま」「自然体」(言葉はカッコイイですが)では、嵐の中の木の葉状態になり、世の中に翻弄されるだけです。

Withコロナ時代のビジネスモデルデザイン

今後ますます環境や状況の変化が激しくなると想像できますが、そのようなパラダイムの中で、私達はどうすれば「生き残る」ことができるのでしょうか?

ビジネスを成功させるためには「想い」は大事です。しかし「想い」だけでなんとかなるような単純な世の中はせいぜい20世紀初頭くらいまでの話。学校でも「計画することが大切」と教えられてきたと思いますが、どんなに綿密に計画したところで、その計画通りに進むことはまず100%ありません。
今までは「それは本人の頑張りが足りないせいなのだ」と教えられ、企業においても「ノルマ」「達成度」で評価が決められてきました。その数字が本当に「本人の頑張り」なのか「前任者や周りの助け」のおかげなのか「偶然」なのかは些細なことと退けられてきました。

一方で「計画は無駄」「個人の想いは関係ない」と「自然体」「なすがまま」が良いという考え方もあります。しかしそれが、良い結果につながるという保証はもちろんありません。(良い結果になりたいと思うこと自体「自然」ではないですから)
生存競争や弱肉強食という言葉も自然界の厳しい掟から連想された言葉です。
現在のように、頻繁に「暴風雨」に巻き込まれる環境や状況下で、それに翻弄されるだけで終わっても文句は言えません。

ではどうすればいいのか?
答えは「変化に対応する」と同時に「想いを形にする」ビジネスモデルをデザインすることです。それができるための鍵はつぎの3つです。

(1)自分がやりたいこと、想いを形に(具体化)してみる。あるいはやっていることはどんな想いなのか、何故やろうと思っているのか、抽象化してみる。
(2)実際の社会の動き、顧客の動向を観察し、あるいはデータを取って、それをフィードバックする。
(3)「自分がやろうとしていること」に「社会や顧客の動き」を当てはめてモデル化する。

読んでみるとわかるように、取り立てて難しいことを言っているのでも、目新しいことを言っているのでもありません。
例えば、あなたのお母さんも毎日やってきたことを「3つの鍵」などと大仰に言っているだけとも言えます。(笑)

(1)子供(あなた)に「今夜何食べたい?」と聞く。「カレー」という具体的な言葉が帰ってくる場合もあれば、「暑いからあっさりしたもの」という言葉の場合も。
そして、お母さんには「栄養のあるもの」「身体にいいもの」を子供に与えるというミッションもある。
(2)家計費の懐具合、スーパーの安売り情報などからお母さんは、適切な材料を選ばなければならない。また美味しい料理ができるためには、この調味料とあの調味料を混ぜるとどんな味になるかとか、火加減によってとろみはどうなるか、野菜嫌いのあなたに食べやすい料理法はなにか、それぞれの要素の振る舞いを考える。そして頻繁に「味見」というフィードバックを行って確認する。
(3)これらの「要素(予算、具材、火加減、あなたの好みなど)の振る舞い」のパターンをプロセス化する。言い換えれば「レシピ」という「モデル」をデザインする。(そしてその詳細はあなたの成長や様々な要因で変わっていく。)
この「モデル」は「家庭の味」としてあなたの身体にも長く残るものになる。

ビジネスモデルデザインはデザイン思考とシステム思考

あなたのお母さんが毎日やってきたこと。これはまさに「デザイン思考」と「システム思考」にほかなりません。
顧客(自分の家族)の要望を把握してメニューを考えるのは、デザイン思考ですし、環境(家計費、スーパーの状況)や要素(具材)の状況を把握しシステムを創る(料理をする)のはシステム思考そのものです。

家庭の出来事であれ、ビジネスであれ、はたまた地球環境のような社会問題であれ、この原則は変わらないはずです。

ICONIX for Business Design

システムデザインやシステムモデリングの世界では、このプロセスは30年近く前から体系化されています。
例えば、ダグ・ローゼンバーグが開発した「ICONIXプロセス」は、「システムの要求を可視化」して、「その振る舞いを明確化」した上で、「振る舞いをオブジェクトに割り当てる。」
まさに「3つの鍵」をコンパクトに具現化した、全体を把握しかつ変化に対応できる強力なプロセスです。

ICONIXプロセス

ただ、ICONIXはソフトウェアのみが対象ですし、UMLベースという若干古さを感じさせるところもあり、私たちは、このICONIXをビジネスデザイン全般に拡張させる「ICONIX for Business Design」を開発しています。

「ICONIX for Business Design」は、デザイン思考とシステム思考をシンプルな形で行えるように体系化し、「想いを形に」デザインできるようにした上で、「システムの変化する環境や状況」に対応できるよう、フィードバックを柔軟にデザインにも反映できるよう、アジャイルやリーン開発(リーンスタートアップ)を誰もが活用できるフレームワークになっています。

ICONIX for Business Design