ティール組織が成功する鍵は、どうすれば組織が自律的に回るのか、いわゆる自己組織化(Self-Organization)がうまく起こるかです。

しかし自己組織化を考える必要があるのは、このような組織形態の企業ばかりではありません。例えば、顧客を組織として考えれば、これはTOPのコントロールが及ばない自律的な組織と考えることができます。
ブームが起こったり、流行も自己組織化現象の一つです。

つまり「自己組織化」について知ることは、マーケティングの世界でも非常に重要なことなのです。

自己組織化とは

自己組織化とは、自律的に秩序を持つ構造を作り出す現象のことをいいます。
例えば、蝶が羽ばたいたほんの小さな空気の渦がやがて台風やハリケーンにつながったり(バタフライ効果)、雪の粒がきれいな結晶を創ったり、現場監督がいないのに、蟻が見事な地下建築物を建設したりする現象など、私たちの周りでもいたるところに見られます。
もっと言えば、数十億年前、アミノ酸やらの分子が集まって、自己触媒化し生命が生まれ進化したのもこの自己組織化現象によるものと言われています。
人間の営みでいえば、集落や都市が生まれ発展していく過程は、この自己組織化にあたるでしょう。
また正確には同義語ではありませんが、「創発」という言葉も同じ意味で使われることが多いです。

自己組織化はなぜおこるのか

物理学者、科学者のイリヤ・プリコジンは、水を温める際に観察される”渦”に注目し、水はすべての水分子が均等に温まるのではなく、その不均衡さが、対流を引き起こし、渦という自己組織化現象が起こるとしました。
そして自己組織化が起こる3つの条件を散逸構造理論にまとめました。
この散逸構造理論がその後の「複雑系」研究の発展のもととなり、プリコジンは1977年にノーベル化学賞を受賞しています。

その散逸構造理論による自己組織化の3条件を挙げてみます。

「外部との開放性」
いわゆる「閉じたシステム」では自己組織化は起こりません。閉じたシステムではエントロピーが増大し、無秩序状態(要はばらばら)になってしまいます。生物が良い例ですが、生きている間は、外部から酸素や栄養を取り込み不要物を排出するなど外部とのやり取りを行い身体を維持しています。しかし生命の営みが止まると外部とのやり取りも止まります。そうするとすぐに朽ち果てていきます。

「非均衡」
ゆらぎが生まれるためには非均衡が必要です。もっとも真に均衡なものを探すことのほうが難しいかもしれませんが。
この非均衡から生まれたゆらぎが次で述べるポジティブ・フィードバックで増幅され創発や自己組織化が起こります。
組織のダイバーシティが注目されていますが、

「ポジティブフィードバック」
外部との開放性、あるいは非均衡があっても、このポジティブフィードバックが起こらないと創発や自己組織化は起こりません。
ポジティブフィードバックとは、良循環、あるいは悪循環と呼ばれる現象といえばわかりやすいでしょうか。
雪の日にきれいな結晶が見つけたことのある人は「なんでこんな綺麗な模様が自然にできるのだろう?」と不思議に思ったことはないでしょうかこれは自己組織化現象の典型的な例です。

人間の営みにもポジティブフィードバックの例は数多く見られます。
このWEBページをパソコンでご覧になている方のキーボード配列は、QWERTY配列ですがこれは有名な自己組織化現象の事例ですし、シリコンバレーに先端IT企業が集積するのも、ビデオデッキ戦争でソニーがVHS陣営に負けたのもそうです。
身近なポジティブフィードバック現象では口コミがそれにあたります。

自己組織化を思い通りにする方法

自己組織化というのはよそからのコントロールを受けないからこそ「自己」組織化なのですが、ビジネスなどに於いては、ある程度コントロールする必要があります。
そうでないと組織がばらばらになったり、思わぬ結果を引き起こしたりするからです。(ちなみにネットなどで起こる『炎上』も自己組織化現象ですね)
ここで、「ポジティブフィードバック」というのは、因果ループ図の自己強化ループと同じものであることを思い出してください。
私たちの社会の営みの中で、様々な「ポジティブフィードバック」や「ネガティブフィードバック」が存在する。言い換えれば「自己強化ループ」や「バランスループ」に私たちは囲まれています。
この2つのループをどのようにコントロールして私たちの目標を達成させるか。夢を叶えるか。あるいは課題を解決するのが、このWEBサイトで述べてきている「システム思考」です。

システム思考にある程度慣れる、私たちのまわりの様々なフィードバックの存在に気づけるようになります。
例えばポジティブフィードバックを強く回そうと思えば、そのフィードバックそのものに介入するよりも、ブレーキを欠けているバランスループを緩めるように介入するほうが効果的である、などという戦略を立てることができるようになるのです。