「未来を予測する最善の方法は、それを自ら創りだすことである」アラン・ケイ

原因となる変数と結果となる変数、その間の因果関係をグラフ化(図示化)したものが、システム思考で使う因果関係の矢印です。
そしてそれらの関係は多くの場合相互作用をしていますので、これらの変数はフィードバック関係にあることが多いです。

このフィードバック関係をグラフ化したものが、因果ループ図。

複雑なシステムである社会の構造を、できるだけわかりやすく描くと同時に、因果関係からわかる今後の姿、つまり、起こりうる未来を描くことができるのが、因果ループ図でもあるのです。

未来魚惣図

したがって、未来は現在起こっていることの結果であるわけですが、そのため私たちが対処する方法は3つあります。

何もしない

何もせず、流れに身を任せる。下手な考え休むに似たり。
これはこれで一つの考えかもしれません。

なりたい未来を心に思い描く

いわゆる願望実現法。
米国で生まれた異端のキリスト教宗派である『ニューソート』の教義である「心に思い浮かべたことは実現する」が、自己啓発の世界に広まってブームになったのが、この願望実現法。
具体的な目標を持つことは、目標を達成するために必要なことですが、これで他人の心まで動かせるわけでは勿論ありません。
(もしそうなら、あなた自身の心も誰か他人の思い描いた願望に左右されることになります。)
成功者にポジティブシンキングの持ち主が多いかというと、必ずしもそうではなく、ネガティブシンキング(マインド)も必要です。
だから悪くなる前に手を打ったり、リスクの回避もできます。

システム思考で、目標とプロセスをデザインする

英単語を100個覚える。絵などの芸術作品を創る。ように自分だけの努力で可能なものは別として、多くの場合、夢の実現や目標の達成のためには、自分自信の努力だけでなく、そのことに関わる他の人や環境など「社会」を何らかの形で動かさなければいけません。
これが社会を「システムとして捉える」ということです。
社会をシステムとして捉えることにより、どうすればそのシステムを制御できるのか、施策をうつことが可能になります。
それが「システム思考」です。

システム思考では、システムの要素と要素のつながりと相互作用をグラフ化(図示化)します。
そのやり方の一つが、上述した「因果ループ」です。

未来を予知し制御する

因果ループ図は、「現在起こっていること」の構造を可視化するものです。
そして因果ループ図の「因果」を辿っていくことで未来を予測することも可能です。
(実際の数値シミュレーションではシステムダイナミクスのストック&フロー図を使用します)
例えば、事業が今後どのように成長するか、市場規模と制約条件を「変数」とすると、今後の売上がどのように推移するかなども予測できるのです。

ロジスティックモデル

努力は必ず報われるか

物事はなかなかうまくいかないのは、世の中の道理。
「努力は必ず報われる」と言って有名になったアイドル歌手がいますが、「それは報われたから言えることだろう」とツッコミが入ったりし
ますね。
学校などでは、「努力の大切さ」を教えます。
実際学校の勉強においては、多くの場合教わったことを先生のいったとおりに努力して暗記すれば、かなりのところまで成功する(そこそこの高校や大学に入れる)でしょう。

しかし残念ながら、学校では社会においては、どのように努力すれば成功するか。夢や目標に達成するのか教えてくれません。
社会では言われたことをきちんとやるだけでは、優秀な歯車にはなれても、主体的には、夢や目標を達成できないからです。
成功の設計図は自分で描く必要があります。
あなた以外の他人は、誰ひとりとしてあなたの設計図を書いてはくれません。

いや、書こうと思えば書けるんでしょうけど、そういう誰か他人が書いた設計図の上で人生を贈りたいですか?

自分の人生は自分で設計する

システム思考は、自分の人生を設計する手法を教えてくれます。
もちろん設計をする手法は、システム思考だけではないでしょう。

しかし、自分ひとりですべて完結できることならともかく、この複雑なシステムの中で、私たちをとりまく周りがどのように動くのか、あなたが一歩踏み出すことで、環境がどう変わって、逆にあなた自身にどう影響を及ぼすか。
これらを踏まえて設計する必要があります。

そして、因果ループ図は、あなたの周りの環境が、今後どのように動くのかシミュレーションをしてくれます。
普通、未来予測というと、私たち一人ひとりは受動的で、それに関してなんの影響力も持ちえません。
(例えば経済が今後どうなるか、国際情勢がどう動くかなど)

しかし、因果ループ図では、そこで私たちがどう行動すれば、私たちを取りまく環境を動かせるのかを考えるためにあるのですから、うまくやれば、未来を知る(予知する)だけでなく、未来を創り出すことも可能になります。
いや、誰もがそうすべきだと思います。