論理思考とは

物事がうまく運ぶようにするのはどうすればよいか。例えば「売上を上げたい」などの課題に答えを見つける方法はなにか。
このような問いの答えを見つける手法(メソッド)として産み出されたのが論理思考(ロジカル・シンキング)です。
論理思考とは、その対象を要素に分解して、その要素一つ一つを解析する手法。文字通り「分析」することをいいます。
私たちの身体は様々な臓器で構成されています。車も様々な部品で成り立っています。

何か問題が起こる。身体の調子が悪いとか、車が故障した、など。そういうとき、私たちは、どの部分が異常なのか考えます。胃が痛い、あるいはブレーキパッドがすり減ったなどの原因を探ることで、その対象法を見つけることができます。
胃が痛いなら胃薬を飲むとか、ブレーキパッドを交換するとかですね。
会社などの組織についても同様です。
会社の組織を分解すれば、製造業でしたら、仕入れ部門、製造部門、販売部門等にわけられるでしょう。
会社の健全度を図る需要な指標である「利益」がでないとなったとすると、上記の部署のどこに原因があるかを探ることが必要です。
例えば、仕入れ値段が高くて、販売価格との差が少なく、赤字担ったのかもしれませんし、製造部門でロスが多すぎるのかもしれません。あるいは販売部門に問題があって、売上予算に達することができないのが原因かもしれません。
そして問題部署がわかれば、さらに分解することで、その原因を探っていきます。
このようにどんどん分解して、原因を探っていけば、その根本原因がわかり、そこに対処することで、問題の解決を図ることができるようになります。

上記の例では、簡単に「部門」で分けましたが、実際には物事は様々な切り口で分解することができます。
例えばマーケティングでは、「売上」の構成要素として、3P(Product, Price, Promotion)という分け方があったり、4C (Customer Cost)といわれる分け方があるのは、ご存じの方も多いと思います。
3Pの手法でいうと、売上を上げるために、製品の品質を上げる。価格を下げる。広告を打つなどの手法を行えば、基本的に売上はあがっていきます。

論理思考の問題点

ただこの論理思考、その限界が指摘されています。
上述のように物事を要素に分解するのが、論理思考の基本ですが、要素通しのつながりは考慮していません。
例えば売上を上げるために、製品性能をあげようとすれば、当然の事ながら製造原価は上がるため価格は高くなるでしょう。広告費用を書けた場合も同様です。
逆に価格を下げて、数多く売ろうとすれば、品質を落としたり、広告費用を削ったりして、原価を下げなければならず、そうすると「安かろう、悪かろう」という評判が立って、製品はますます売れなくなってしまう。
また、安く売ろうとすると、競合他社もより価格を下げて価格競争がおこり、ますます価格を下げなければ売れない、などという事態もおこります。
そうすると消費者は「価格」に敏感になって、より安い製品を求めるようになります。
そうして、価格競争の結果、どの企業も利益がでないため、給料も上がりません。
当然人々の財布の紐は固くなり、ますます価格競争に拍車がかかります。
(ブログをお読みの方は、この「拍車がかかる」という表現、「フィードバック」であることがわかりますね?)

これが、現在の日本を覆う「デフレ」の正体だったりします。

ことわざ(?)でも、「あちらを立てればこちらも立たず」と言います。

このような分解して「つながり」を考えない論理思考では、この複雑な社会では、解決策が難しいのです。
上記のような、売上と価格の問題、環境問題、人口減少問題、地方の過疎化など、論理思考で説くのはまず無理です。

全体とつながりを見るシステム思考

ここで注目されているのが、「システム思考」です。システムとは、「要素と要素の間の相互作用」をいいますが、この相互作用、つまり要素の間がどのように繋がって相互作用を起こしているのかに注目します。
「相互作用」とは、ある要素の動きが、他の要素に影響をあたえること。
要素Aの値が上がると要素Bの値が上がったり、下がったりすることをいいます。
この場合、要素Aと要素Bの間に因果関係があるとも言いますね。

そして、この因果関係をグラフ化したのが因果ループ図です。

未来予想図

因果ループ図を丁寧に紐解いていくと、複雑に入り組んだ問題であっても、どの部分に刺激を与えれば、全体に影響をあたえることができるのか、が解るようになります。

有名な事例をあげると、ニューヨークの重大犯罪を数年で1/4にした、「割れ窓理論」があります。
「窓ガラスを修復する(=街をきれいにする)」ことで、あれほどニューヨーク市警が何十年も苦労してできなかったことが、たった数年で達成してしまった。

これがシステム思考の威力です。

デカルト以来、数百年の歴史がある論理思考に比べ、まだ生まれて数十年のシステム思考ですが、システム思考は、このような街の課題はもちろん、ビジネスや地球環境問題まで、あらゆる分野で取り入れられ、課題解決に成果を上げ始めています。