ブログやSNSの普及とともに、インバウンドマーケティングあるいはコンテンツマーケティングと言われるものが広まりました。

インバウンドマーケティングを唱えたのは、HubSpot創業者のブライアン・ハリガン。
従来の、営業や広告という打って出るマーケティング手法から、ウェブサイトを充実させ、お客を呼びこむマーケティング手法を指します。

もともとインバウンドは、来日する観光客を指す用語。海外の人にものやサービスを売る場合、その現地にものを届けたり、店舗を構えたりと、いわゆる「輸出」「海外投資」と言われるマーケティング手法に対し、日本に来日してもらい、その観光客相手に、商品を買ってもらったりサービスを与えたりするのが「インバウンド」です。

インバウンドマーケティングでは、サイトの訪問者を増やし、そこから自社商品やサービスの販売に結びつけることを目的とします。
従来は、広告や広報で広くサイトの存在をアピールすることで、新規顧客を呼び込んでいました。しかし現在では広告やPRというものの信頼性は以前より低下しています。
そこでSEO(検索エンジン最適化)という手段が注目されてきました。
以前は、検索エンジンの性能もさほど良くなかったこともあり、そのアルゴリズムに合わせたサイトの作りをするのがSEOでしたが、今では、そのサイトのコンテンツが大事とされています。

検索エンジンで、検索をする目的は、何かを買おうとする場合と、調べる場合があります。
その比率は、圧倒的に「調べる」が多いのです。そこで、サイトのコンテンツを充実させ、自社サイトをその分野の「専門サイト」にする。そのために知識やノウハウなどをサイトにたくさん載せ、ものを調べる人に役立ってもらう。
これがコンテンツマーケティングです。

かつてのインターネットマーケティングでは、サイトの訪問客にいかに自社商品をスムーズに購入してもらえるか、を考えてサイトの作りを考えてきました。
例えば、注文のステップをできるだけ少なくする。問い合わせ窓口や買い物かごを、ひと目で分かるように設置する。などです。
インバウンドマーケティングでは、訪問客にすぐ購入してもらうようなサイトのつくりにはしません。その代わり情報を検索してもらいやすくしたり、内容を豊富にして、何度も訪問したくなる情報を得たくなるサイトの作りにすることが必要とされます。
そのために、SEO、ブログ、SNS、メールマガジンなど、情報に接する機会(タッチングポイント)をできるだけ多くするようにサイトを構成します。
HubSpotは、これらのことがやりやすいサイト構築ツールが主力製品となっています。

ファンを作りフィードバック・ループを起こす

もちろん、従来のウェブマーケティング手法においても、コンテンツの充実の必要性や、ブログやSNS、メルマガの活用は言われてきました。
そういう点ではインバウンドマーケティングというのは、特別新しい手法ではありません。
よく言われるのが「リピーター」「顧客の囲い込み」「顧客を育てる」「エバンジェリストになってもらう」「情報を拡散してもらう」という表現です。

広告手段を使って、新規顧客を増やすやり方、リピーターを増やすやり方。どちらが効果的なのか。
簡単なデータを使って、システムダイナミクス(システム思考)ツールでシミュレーションを行ってみましょう。

ある町にランチを提供するレストランAとBがあるとします。
下図のAとB、潜在顧客(商圏人数)は3万人。購入(来店)率は1週あたり1/1000と考えます。しかし、Aは広告を使うことで、Bの3倍の人に目にふれるようにします。
一方Bは、広告手段は使いません。そのかわりサービスを充実させることで、顧客のうち100人中3人がファンになって毎週ランチを食べてもらえるような施策を打ちます。
100週間(約2年)のAとBの顧客数推移を見てみましょう。

このように、中長期で見れば、ファンになってもらって、リピートを増やすほうが効果的であることがわかります。

ロックバンドに学んだインバウンドマーケティング

ブライアン・ハリガンがこのことを学んだのは、アメリカのロックバンドの「グレイトフル・デッド」というロックバンドからだといいます。
1960~70年代のロックブームの中、生まれたこのバンド、他のバンドのようにプロモーションを打ってレコード販売で稼ぐ、という手段を取りませんでした。

代わりに彼らは、コンサートやライブ活動で、ファンを増やす手段を取ります。当時はコンサートやライブは、レコードを売るプロモーション手段と考えられていましたが、彼らはそれを引っくりかえしました。
そして、徹底したファンサービスを行います。

現代の音楽ビジネスをご存知の人は、今では当たり前のやり方、と考えると思いますが、当時は珍しい考え方だったのです。
しかも彼らは、21世紀の現代よりも先を言っている部分があります。

それはコンサート中の録音をOKにしたこと。
ライブの録音を許可すれば、それが広まって、CDは売れなくなる。

それが音楽ビジネスの常識で、今でも殆どのライブ会場で録音は禁止されています。
しかしグレイトフル・デッドは、録音された音源が広まることで、彼らの音楽に触れる。そうしてライブに来てもらう、ということを重視しました。

そしてファンは、自分の録音したものがあっても、(より良い音質の)レコードを買うもの。

このようにして、彼らは熱狂的なファンを獲得しました。
彼らのツアーには、多くのファンがそれを追っかけるという現象がおきました。

グレイトフル・デッドについては、ブライアン・ハリガン自身の著、「グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ」に詳しいので、一読をおすすめします。

グレイトフル・デッド