ソリューション営業の時代

営業や販売に従事する人はもちろんのこと、多くのビジネスパースンが営業力あるいは販売力が必要であると感じています。就職活動中の学生ですら「自分を以下に売り込むか」が問われます。今の時代、自分を売り込めないと出世にも影響します。
その営業力もかつては「熱意」あるいは「強引さ」そしてそれを支える「話す力」が必要とされました。商品(あるいは自分自身)の特徴(例えば他の商品と比べて優れた点)をいかに論理的に、熱意を持って、時には強引に話すことができるか、が大事でした。

しかし物も情報も豊富な今は、このような手法ではうまくいかないことが多くなりました。
便利なものが一通り行き渡り、これ以上「便利になりたい」「もっと豊かになりたい」という欲が少なくなったこと、所得が頭打ちで携帯代のためにその他の消費を抑えるといった選択消費が当たり前になっていることなどが原因と言われます。

そういう中ここ最近言われているのが、「ソリューション営業」。
単に商品を売り込むのではなく「顧客の課題解決」のために商品を提案する営業手法と言われます。
ソリューション営業への転換で成功したのが日立製作所です。
日本の電機業界全体が落ち込んだ2000年代初頭、それまでの家電販売の分野から撤退し、社会インフラのソリューションに全社的に切り替え、見事にV字回復に成功したのです。
東芝等他の同業者も同じ改革を目指していますが、なかなかうまくいかないようです。

「ソリューション営業」って結局何なのか?

ソリューション営業、あるいは提案営業。言葉はスマートに聞こえますが、今までの営業や販売と何が違うのでしょうか?
押し売りは別として、今までの営業や販売も「お客の潜在ニーズに答える」「顧客の声に耳を傾ける」というのは営業の世界でも昔から言われてきた言葉です。
あるいは顧客(企業)の課題は究極的には、「売上を伸ばす」「経費を削減する」の2つですから、「弊社の商品で売上が上がります」「このシステム導入で自動化され人件費が下がります」というのも昔からありました。
「御社の悩みはこのソリューションで解決」といったキャッチフレーズやあるいはストーリー営業と称して、丸暗記したストーリーを語っても、結局今までとそれほど変わらない営業という会社も珍しくありません。

システム思考で課題解決力を身につける

顧客の側も、それほど親しくない取引先の営業担当に会社の課題解決、問題解決など期待する、ましてや頼むなどということは、普通はありえません。
「ソリューション(課題解決)って言葉はいいけど、結局、売り込むための方便でしょう?」と思っているのです。

「ソリューション営業」が成功するためには、営業担当を始め社員の「課題解決能力」を上げるしかありません。
御用聞きのように「何か課題はありますか?」「うーん。経費を抑えたいね」「それならこのシステムの導入で月々の支払いが・・・」というのは「課題解決」とは言わないのです。

何度も述べていることですが、課題を解決するというのは簡単なことではありません。意外なところに原因があったり、よかれと思っていることが逆に作用しているのが社会システムです。(もちろん企業も社会システム。)

システム思考を身につけることで、社員一人ひとりの課題解決力を上げる。
地道ですが「ソリューション力(課題解決力)」を身につけるにはそれしかありません。
それをしないで、「いかにもそれっぽい」営業マニュアルをつくっても、それで通用するほど世の中が甘いものでもないのです。

「システム思考」は文字通り思考法です。特別な技術や資格が必要なものでもありません。
ちょっとしたコツである程度マスターすることが可能です。
そしてシステム思考で世の中を見ることで、課題解決力も徐々に身についてくるでしょう。

システム思考でUPするプレエンテーション能力

ソリューション営業、提案営業で最も大事な課題解決力という「基礎体力」をつけることができるシステム思考ですが、顧客へのプレゼンテーションでも、このシステム思考は大いに役立ちますし、またソリューション営業のプレゼンのためには必須なスキルでもあります。
プレゼンでは、自社製品がいかに顧客の課題解決に役立たせるかの説得力が問われるわけですが、簡単な因果ループ図(そのものを提示するかどうかは状況次第ですが)を示すことにより、顧客にわかりやすく伝えることができます。
また、製品やサービスの内容にもよりますが、場合によってはストック/フロー図などシステムダイナミクスでシミュレーションした数値やグラフを提示できれば、なお説得力を増すことができます。

これからの営業にますます必要なシステム思考

このシステム思考という分野、世の中にそれほど知られているわけではありません。
特に普通の営業パースンには殆ど知られてないと言ってもいいでしょう。
だから、今あなたはものすごいチャンスです。
システム思考を通じて、本当の課題解決力を身につけたあなたは、ライバルに比べて圧倒的な武器を身に着けたことになるのですから。