SDGsとは何か
SDGsとは持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)の略で、2015年に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で記載された2016年から2030年までの国際目標を指します。
持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っています。
SDGsは国連、そして国家としての「目標」なのですが、その達成のために、先進国も途
上国も含む各国政府や市民社会、民間セクターを含む様々なアクター(主体)が連携し、ODAや民間の資金も含む様々なリソースを活用していく「グローバル・パートナーシップ」を築いていくこととされています。
民間企業においても、「持続可能」な開発が求められるのと同時に、これをビジネスチャンスとして積極的に課題の解決に関わろうという企業も出始めています。
また最近では、このSDGsに積極的にかかわってる企業ほど、株式市場の評価、あるいは収益においても高いリターンを得てるというデータもあります。
実は、SDGsに積極的な企業ほど、特に中長期においてビジネスの良い影響を与えます。その理由(メカニズム)について述べたいと思います。
CSRからCSVへ
もともと企業統治には、CSR(Corporate Social Responsibility)という考えかたがありました。社会の一員としての責任が企業にはあるという意味です。
これは、高度成長期に工場から出る排水、ばい煙などから周囲の環境悪化や健康を害する事件が続き、そのような企業活動の負の側面にも企業は責任を負うべきとの考え方が定着してきたことにあります。
企業側もそうした声に逆らえず、アピールの意味も込めて利益の一部を慈善活動などに寄付をしたり環境保全活動に充てるなどの活動を行うようになりました。
このように、どちらかというと、環境保護などのCSRと企業活動の文脈は別である、言葉を選ばずに言えば「仕方なくやっている」のがCSRであったわけですが、2000年ごろから、「これは別ではない、そもそも社会課題を解決することに企業活動の目的がある」とう考え方が台頭してきました。
このきっかけの一つが、マイケル・ポーター教授がハーバードビジネスレビューに発表したCSV(Creating Shared Value)論文です。
ポーター教授は、経済的価値と社会的価値を同時実現する共通価値の戦略を唱えました。
「共通価値(Shared Value)」とは「企業が事業を営む地域社会の経済条件や社会条件を改善しながら、自らの競争力を高める方針とその実行」と定義されます。
CSVの事例として、例えばネスレの取り組みがあります。ネスレはコーヒー産地であるアアフリカ等のコーヒー園を始めとする雇用や社会環境の整備に多額のお金を投じています。
かつてアフリカやアジアの農場は「プランテーション」と呼ばれ、従業員は低賃金、劣悪な環境で働かされていました。そのような「搾取」によって、欧米企業は大きな利潤を上げることができました。
しかし今ではそのようなやり方では世間の批判を浴びて、企業のブランド価値を下げてしまう。そこでCSRが必要という考え方だったのですが、ネスレはそこからさらに一歩進んで、コーヒー園の働く環境、アフリカや南アメリカ等コーヒー栽培地域の環境を良くすることが生産性を上げ、良質のコーヒー豆を生産することにつながると考えました。
したがって環境を良くすることは、本業に直結した活動だというのがネスレの考えです。
またボルヴィックの1ℓ→10ℓキャンペーンのように、社会を良くしながら売り上げを上げる、コーズマーケティング(Cause Related Marketing)も様々な企業が取り入れています。
SDGsを考えるのはエコシステムを考えること
このCSVの考え方とSDGsの考え方は共通するところが多いです。
現在地球には様々な課題や問題がありますが、企業も地球の一員である以上、その問題から離れることはできません。そしてそもそも企業というのは、人々の課題、食べ物やモノ情報が欲しい、快適な暮らしをしたいという欲求を充足することで収益を得て存続してきたわけです。SDGsが抱える現在の課題である「持続可能性」というのも同じことです。
そしてもう一つ、SDGsを考えることは、エコシステムを考えることです。
目の前の、直接のお客の欲求を満たすことを考えるだけではなく、その先、例えばその商品が使われた後、破棄される。それがどのような環境負荷を与えるのかを考える。
あるいは、仕入先のその輸入先の工場従業員の雇用環境を調査する。
これは、例えば、原材料を生産している(直接契約していない)工場の環境が劣悪だったとして不買運動まで起きたナイキのようにならないというばかりではありません。
CVCAのページで紹介したように、鉄道の利用者に鉄道に乗りたくなる施設(ターミナルデパート、宝塚劇場)を作った阪急、そして、顧客先の自動車メーカーの販売数が増えるよう、そのユーザーがドライブしたくなるような冊子(ホテル・レストランガイド)を作ったミシュランタイヤ。
これらの成功企業に共通していることは、顧客のその先のエコシステムまで考えた販売・マーケティング戦略を持っていたことです。
阪急電鉄のCVCA
ミシュランのCVCA
つまりSDGsを考えることは、企業活動をエコシステムというシステム思考で考えることにほかならず、これは阪急、ミシュラン等エコシステムの構築で成功した企業と結果的に同じ戦略をとることにつながるわけです。
これがSDGsを考えることが、「ビジネスにも良い影響を与える」理由です。