システム思考はよい人間関係にも役立ちます
私たちは様々な悩みを抱えていますが、ひところブームになったアドラー心理学では、人間の悩みはすべて、対人関係の悩みである。と言われています。
人生にはお金や病気、老いなど様々な苦しみがありますが、これらが原因と考えられる『悩み』も対人関係の悩みに帰結するといいます。
逆に言えば、人間関係をよくする術を身につければ、私たちの悩みはすべて無くなるということになります。
システム思考は、物事をシステムとして捉え、それを制御することを通じて課題解決をする方法論ですが、改めて、「システムとは何か」を問うてみると、「要素と要素の間の相互作用」を指します。
人間「関係」とは、人という要素間の相互作用そのものを指しますね。この相互作用が良い方に働くか、悪い方に働いているかで、私たちは日々一喜一憂しています。
システム思考は、組織やビジネス、地域社会などの「社会システム」を対象に様々な課題解決に取り組んでいますが、一対一の対人関係、人間関係の悩みの解決にも、有効なのは言うまでもないことだと思います。
対人関係の解決のためには、「心理学」がありますが、システム思考ももっと活用すべきで、私たちがもっと幸せに暮すことに役立っていけるのではないでしょうか。
返報性の法則をシステム思考で説明する
システム思考と、心理学の関係について、有名な『返報性の法則』で見てみます。返報性の法則とは、「相手が自分を好きになると、自分も相手を好きになる」という人間関係のいわば基本法則ですね。
もちろん逆にもあてはまり、なんとなくいけ好かないと思っていると、相手も自分のことをそう思っている。おそらく多くの人に経験のあることだと思います。
これをループ図で描いたのが、下図です。(因果ループ図ではなく、シミュレーションもできる、システムダイナミクスのストック&フロー図で表現しました。)
相手に笑顔を向けられたり、好意を表現されると、殆どの人が嬉しく感じます。嬉しく感じる対象(相手)には、好意の気持ちを持ちますので、その良い気持ちが笑顔に繋がり、また相手への良い表現となるでしょう。それが、また相手の好意を呼ぶ。
この間に正のフィードバックループ(自己強化ループ)が働きます。
例えばAさんとBさんが週に1度出会う機会があって、ちょっとした笑顔や好意のやり取りがあったとします。自分が嬉しく思う感情を1。それを相手に返すのは0.5というほんのちょっとした単位だと仮定しましょう。
これを上手でシミュレーションすると、フィードバックループが働いて、4ヶ月後には、130倍にもなります。男女だったらこんなことで恋愛感情まで行ってしまうかもしれません(笑)
無論逆にもいえて、ちょっとしたすれ違いが130倍にもなって、憎くてたまらない関係になる可能性もあるのです。
家族や職場など人間関係の問題解決はシステム原型が役立つ
また因果ループ図作成の補助ツール的に編み出されたシステム原型は、そのまま対人関係の悩み解決に役立つでしょう。
例えば、家庭問題で、「子供が悪さをしたので叱るが、反抗してもっとひどいことをする。」というのはシステム原型「応急処置の失敗」の型ですので、その解決法が役立つでしょう。
隣人とのいさかいは、「エスカレート」。兄弟への対処の失敗は、「成功には成功を」がそのまま当てはまるかもしれません。
自分自身のスキルや才能の無さを嘆く人は多いですが、これには「成長の限界」あるいは「成長と投資不足」にある問題であって、知らないうちにストップをかけているバランスループを認識して、そのループを弱めるような施策を打つことで、あなたの才能がもっと花開く
可能性もあります。
心理学とシステム思考
上記のようにシステム思考(システムダイナミクス)は、心理学と同じように、人間関係を深めたり、対人関係の問題を解決することに役立ちます。
もともとシステム思考は、生物学者のルートヴィヒ・フォン・ベルタランフィが生物の仕組みを定義するプロセスで生まれた「一般システム理論」がベースになっていますので、心理学とも相性はよいものです。
今なお、便利な製品や仕組みは次々と生まれ、私たちの生活はどんどん便利となっています。AIやロボットが私たちの身近な存在となって、今の携帯やスマホのように、無くてはならない状態となるのも、それほど遠い未来ではないかもしれません。
それでも私たちの悩み、対人関係の悩みが解決されることはなさそうですし、世の中が便利に様々な物事のスピードが早まっていくぶん、世の中が複雑になり、様々な人間関係の問題、対人関係の悩みは増加しているようにも感じます。
システムダイナミクスも、ジェイ・フォレスターが打ち立てた産業や企業の課題解決(インダストリアル・ダイナミクス)、都市問題(アーバン・ダイナミクス)、資源問題や地球温暖化等の環境問題(ワールド・ダイナミクス)だけでなく、人間関係の課題解決、いわばパーソナル・ダイナミクスを対象にすべきと考えています。