なぜ頑張っても報われないのか?

「頑張ってるのに報われない」
よく耳にする言葉ですし、あなた自身つぶやいているかもしれません。
そういうとき人は「まだまだ自分は頑張りがたりない」「自分は向いていない」「自分は何を間違えたのだろう」
と自分自身を責めます。(「◯◯のせいだ」と責任転嫁する人もいますが。)

そして「やる気」に無理やり火をつけて、もっと頑張ろうとします。
それでもやっぱりうまく行かず、「やっぱり自分には無理だったんだ」と諦める。
「所詮世の中は、頑張っても報われないことが殆どなんだ」

と厭世的になり、全てにやる気をなくしてしまう。
やる気がなければ、もちろん何事もうまく行きませんから、ここからの人生は「うまくいかない」スパイラルに嵌ってしまいます。

あるいは陥りやすいのが、「あなたは目標をイマージする力が弱い」と「引き寄せの法則」に嵌って、行動しなくなる人。
「目標を明確にする」ことは確かに大切なことですが、だからといって、「イメージするやり方がうまくなった」からといって、その分夢に近づく、などということはありません。

やる気が全く起きない人に「自己暗示」となって、やる気が起きるという効果はあると思いますが、少なくとも今一生懸命頑張っている人にはあまり関係ないことです。

実は頑張っても報われない原因の多くは、その対象の、社会システムそのものに原因があり、多くの場合アクセルとブレーキが両方かかっている状態にあるからです。
そして一生懸命アクセルを踏めば踏むほど、ブレーキも強くかかる。これが社会の仕組み(システム)の基本だからです。

アクセルとブレーキが「両方同時にかかる」とはどういうことなのか?
システム思考で考えると、すぐにその理由がわかります。

システムの意外なふるまい

システム思考の教科書でもよく使われる簡単な社会システムの因果ループ図「ニワトリとたまご」を描いてみます。
ニワトリはたまごを産みます。そのたまごはやがて孵ってヒヨコになり、またニワトリになり、たまごを産みます。
その繰り返しで、どんどん増えます。
因果ループ図で描くと、下のようになるでしょう。

この図だけを見ると、ニワトリは永遠に増えそうです。しかし実際はそんなことはないですね?
ブレーキをかけるものがあるからです。
例えば、ニワトリが増えすぎると、餌が不足します。また鶏小屋のような施設で育てているとしたら、増えすぎることによる環境悪化が原因で、あるいは狭いゲージに耐えきれず飛び出して、車に轢かれてしまうかもしれません。
このことを因果ループ図で簡単に描くと下図のようになります。

この2つを合わせれば、アクセルとブレーキ両方かかった状態というのがわかるかと思います。

このようなときに、もっとニワトリの数を増やそうとして、無理やりたまごを産ませてもうまくいかないのは、すぐ理解できますね?
こうした状況下でニワトリの数を増やすには、餌不足をなくす、鶏小屋をもっと広くするなど、ブレーキの原因を調べて、それを”緩める”ことが必要です。
同じようなことは勉強時間と疲労、飲食店売上と席数、商品販売と製造能力など、営業と市場規模等多くの活動やビジネスに当てはまります。こういうときは、一生懸命アクセルを踏んでも、同時にブレーキもその分強くかかるためうまくいきません。

システムの動きは予想できる

上記の因果ループ図は、「成長の限界」のシステム原型といいますが、少し視点を広く見れば、誰にでも理解できるものですが、中にいる(例えばニワトリには)ここまで理解できません。目の前の出来事(餌が足りないとかゲージが狭くて窮屈であるなど)の解決に夢中になってしまうからです。
このように中からみてわからないことが、社会をシステムとして捉えることによって、その動き(つまりは将来)がわかるようになります。
社会システム動きは複雑で様々ですが、私たちが意思決定に際し注意すべき点は、実はそれほど多くありません。
上の「成長の限界」に見られる、「もっとアクセルを踏め」の考えでうまくいかない。「良かれと思った行動」が副作用を読んで失敗する。「私にもっと利益を」とおもって行動したことがライバルとの関係等で逆にうまくいかなくなる。
だいたいこの3つに集約されます。

システム思考で夢に近づく

冒頭に書いたように今の世の中「頑張ってもうまくいかない」ことが多いのは、社会システムが非常に複雑だからです。
キリスト教の異端宗派のニューソートが誕生した19世紀半ばなら「願えばかなう」「心にイメージすれば成功が引き寄せられる」ということも容易だったかもしれません。
しかし21世紀の今、社会システムは飛躍的に複雑になっていて、簡単にはときほぐれません。
しかし逆に言えば、その社会システムを理解し、どのように働きかければ効果的かわかれば、夢の実現はぐっと近づいてくれるはずです。

そのための武器「システム思考」が今の世の中には何より必要な思考法、スキルであるといえるでしょう。