本日はギャラリーで行われた、表題の講演会に行ってきました。
株式会社オーラルケアは予防歯科に取り組む会社。今では虫歯予防でおなじみの「キシリトール」を日本で初めて紹介したのが同社だそうです。
しかし日本にキシリトールの普及に障害になったのが歯科業界。
つまりキシリトールの普及により虫歯人口が減ってしまったら、歯科医にとっては打撃というわけです。
そこで、大竹社長は歯科業界と戦うことなく、歯科業界に今までなかった「予防歯科」という概念を持ち込むことによって、「抵抗勢力」であった歯科業界を味方にするばかりでなく、歯医者さんのネットワークを販売チャネルとするアイデアを提案。
人口減少などで歯医者の「マーケット」が先細りする中、歯医者さんにとっても新たな市場を提案し「WIN-WIN」の関係性を築くことに成功しました。
この会社は、キシリトール配合製品をはじめ虫歯や歯槽膿漏の予防商品というニッチな分野に絞って製品展開をしており、かつ新たなアイデア商品を次々と発売し、高収益をあげているそうです、曰く「他社とは同じことは絶対にやらない」のが高収益経営の秘訣とのこと。いわゆるブルーオーシャン企業と言ってもよいでしょう。
そしてこの会社が、他と違う新しいことをやり続ける、つまりイノベーション企業でいられる理由は、同社の壁という壁に飾られている「コンテンポラリー・アート(現代アート)」のおかげと言います。
なぜ「コンテンポラリー・アート」なのか。それはその難解さというか、一見何を表しているのかわからないという特徴があります。
つまり観る人によって様々な解釈が可能になる。
「この絵はこういうモノです」という、正解がないゆえに、多様な意見が出され、また人とは違った意見を言う環境づくりに役立つ。
この会社は、そのような環境、コンテンポラリー・アートといういわば「アートの力」によって高収益を上げ続けている企業であるといいます。
因果ループ図で描くと、下記のようになるかもしれません。
未来工業の高収益モデル構造
上記の因果ループ図を描いたとき、思い出したのが「未来工業」のモデルです。
この会社は、「残業禁止」「ほう・れん・そう禁止」「営業のノルマ一切なし」というユニークな経営で知られ、坂本光司法政大学元教授の「日本で一番大切にしたい会社」にも選ばれている企業です。
私はこの会社に何度か取材で訪問し、また現社長にもお話を伺い、この会社の高収益の秘密が、この会社の理念ともいうべき「常に考える」経営であることがわかりました。
「常に考え続ける」ことで、様々な工夫が生まれ、生産性も上がり、商品に他社にはない細かい工夫やアイデアが入ることで、電設部品というローテクな分野でありながら高いシェアを誇っていて、創業以来黒字を出し続けている。「常に考える」という標語を掲げるばかりでなく、人事制度や社内制度においても様々な施策をうっているのが「未来工業」という会社のユニークなところです。
未来工業が、高収益を上げるため、社員に「常に考える」という環境を作っているのと同様、オーラルケア社では、社内にアート(コンテンポラリー・アート)を掲げている。
両社とも、社内にそのような「場」を創ることで、社員の意識、無意識(潜在意識)に流行ら気かけて効果を上げてる会社と言えると思います。
アートでセンスメイキング(創造力)を高める
今、アートがビジネスパースンの間で関心が高まっている理由の一つが、アートに触れることによって、創造力、イノベーションの力が高まることが期待されていることにあります。
このオーラルケアもそうですが、欧米企業でも、エアビーアンドビーや、ダイソンなどの革新企業の創業者は、美術学校の出身ですし、企業幹部に、MBA(経営学修士)よりもMFA(Master Fine of Art 芸術学修士)を雇用しようという動きもあります。
また、フィナンシャルタイムズは、2016年11月の記事で、ビジネススクール(MBA)への出願数が減少傾向にある中で、アートスクールや美術系大学によるエグゼクティブトレーニングに、多くのグローバル企業が幹部を送り込み始めていると報じました。
またニューヨーク近代図書館が開発したVTS(Visual Thinking Strategy)というプログラムは、現在では多くのグローバル企業やアートスクールにおいて、「見る力」を鍛えるために盛んに実施されています。
私たちが開発した「アート思考フレームワークを活用してセンスメイキングを高める」手法では、VTEのような、専門のファシリテーターがいなくても、仲間内だけで(慣れれば一人でも)美術作品(のレプリカや写真など)があれば、気軽に始められて、しかも高い効果があることがわかっており、ワークショップなどでの活用も始まっています。
株式会社オーラルケア
https://www.oralcare.co.jp/
未来工業株式会社
http://www.mirai.co.jp/
参考図書
世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」
山口周著 光文社新書
第2回ビジネスイノベーションのための「アート思考」ワークショップ
日時:2019年3月4日(月) 19:00~21:00
場所:はたらける美術館
住所 東京都渋谷区本町4丁目41-13
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