日経新聞で、インフルエンサー・マーケティングの記事がありました。

インフルエンサーとは、ネットなどで、他人に影響力を持つ個人をいいます。多くはSNSで多数のファンを持っています。
東南アジアは、SNSの利用率が高く、インドネシアでは、1億人以上がフェイスブックに加入しているほど。
4月開催のイベント「インフルエンス・アジア」では3千人を集めて盛況だったそうです。

全日空は22万人のファンを持つシンガポールの女性に動画サイトを通じて東北旅行の魅力を伝えてもらうというのを行っていて、この影響で、全日空便の搭乗客増加につながるという成果を上げました。
資生堂はタイでインフルエンサーを活用し、洗顔料のシェアを1年で12位から5位に引き上げました。

日本でも、ブログを活用したインフルエンサー・マーケティングは、昔から行われてきました。
ブログ・マーケティングなどと呼ばれますが、読者数(ファン)を多く持つブロガーをイベントなどに招待して、記事を書いてもらうという手法です。
アニメ版の「時をかける少女」は、最初30館程度の公開ですが、試写会に招いたブロガーの記事が評判になり、ロングセラーとなりました。また、日産自動車は玩具メーカーのタカラと組んで、キャンペンガールにリカちゃん人形とする新車イベントを行い、多数のブロガーを招待。このいかにもブロガーが喜んで記事にしそうなキャンペーン戦略で、イベント中から多数の記事が公開されたそうです。

インフルエンサー・マーケティングの特徴

最近特に若い人たちの間で、テレビの視聴時間や新聞や雑誌の閲覧時間の減少が見られます。一方で伸びているのが、スマホをデバイスとしたインターネットの閲覧時間です。
そうした環境の中、既存媒体の広告費が伸び悩む中、インターネット広告が一人勝ちのような状態となっています。そしてこのインフルエンサー・マーケティングもSNSを活用したインターネット広告の一分野という扱いです。
私自身、広告業界に長い間いましたので、広告業界の価値基準は身にしみていますが、彼らは、どれだけの数の人に、広告や広報のコンテンツが届いたか、リーチ数で判断します。
上述のシンガポールの女性のケースでは、読者数22万人。つまり彼女はテレビでいう視聴率を持つ番組と同じ扱いです。
むろん一つの媒体効果としては、既存媒体は大きなリーチ数を持っています。
全国新聞であれば数百万人の読者がありますし、テレビ番組であれば、視聴率10%でもキー局の番組であれば、単純計算で1千万人へのリーチ数です。

ただしインターネット、特にSNSは他の媒体と比べて、シェアやリツイートが起こりやすい。つまり(インフルエンサー×読者数)+(シェア数×シェアした人が持つ読者数)という数式が描けます。
もう一つは、これはもちろんネット広告に限った話ではないのですが、シェアやリツイートされる内容は、必ずしも広告主の利益にかなう方向に向かうとは限りません。
世間と同じで、悪口のほうが拡散しやすい。この場合「炎上」という状態になります。
彼らが敏感に嫌うのが、広告主のため、自らの金銭欲のために、あたかも自らの意志のように書く、いわゆる「やらせ」といわれるものです。
お金をもらい広告主のために記事を書く時は、これは記事広告である旨記載する必要がありますが、これを怠ったがために炎上し、謹慎せざるを得なくなった芸能人の例もあります。

インフルエンサー・マーケティングの本質はフィードバック・ループ

私たち個人や中小企業には大企業のような大掛かりな、インフルエンサー・マーケティングを仕掛けることはできませんし、また短期間でのリーチ数にあまり気を使うべきでもありません。

大事なのは、リーチ数の大小よりも、フィードバック・ループが起こるかどうかだからです。
単なる記事の拡散は、1回かぎりですが、正のフィードバック・ループは、それをストップサせるものが無い限り、ずっと回り続け、指数関数的にその数を伸ばしていきます。
短期的には、効果はわからなくても長期的には莫大な数になります。
別のところでも触れましたが、一人の顧客が、月あたり1人だけ新たな顧客を連れてくる戦略をたてたとします。(必ずしも不可能には聞こえませんよね?)
翌月の顧客数は2人。3ヶ月後は4人。そして半年で32人です。1年後にはなんと顧客数は2千人になります。しかしフィードバックの威力はここかららで2年後には8百万人になり、3年後には3百億。世界人口を遥かに超えてしまいます。

もちろんこれは机上計算に過ぎませんが、フィードバック・ループの威力の凄さは簡単な計算で実感できるのではないでしょうか?
このフィードバック・ループを因果ループ図で書いてみると、下記のようになるでしょう。

インフルエンサー

ループ図を書くと、レバレッジポイント。ループが回るよう(フィードバックが起こるよう)にするにはどうすれば良いかヒントを得ることができます。

この場合は、商品の良さ、そしてインルエンサーの比率であることがわかります。
この2つを高めるためにはどうすればよいか考えることが、戦略を立てる肝となります。