ミカエル・セルヴェトゥス
ミカエル・セルヴェトゥスはスペイン出身の医師・神学者です。宗教改革の時代にカトリック、カルヴァン派双方を批判する書物を書き、1553年スイスのジュネーブで火あぶりの刑に処せられました。
彼は1531年に「7つの書物における三位一体説の誤謬」という本を書きました。
それによれば、神、精霊、イエス・キリストを同一のものとした、三位一体説は間違っているとしています。
宇宙は、一体のものであり分割が不可能な全在の神である。宇宙のあらゆる生物や非生物のうちにも神は存在する。したがって、イエスという人だけが神であるというのは間違っているとする、ニューソートの思想につながっていきます。

エマニュエル・スウェデンボルグ
学者、発明家としてっも名高く、霊界や他の惑星に行き、金星人や火星人にも会ったとするスウェデンボルグもまた、三位一体説を否定する神学者でもありました。
スウェデンボルグは、三位一体の否定とともに、原罪を明確に否定しました。原罪とはキリスト教の根底にある思想であり、アダムとイブが蛇にそそのかされ、神に背いて禁断の実を食べて楽園を追放された罪を指します。
イエスは十字架を持って、悪魔(=蛇)に立ち向かい、人類の罪を贖うために磔となったとされていますが、スウェデンボルグはそれを否定し、「神はけっして怒らず、けっして悔いず、誰をもけっして試練にあわせず、無垢な者たちの運命をけっして予め定めず、あるいは邪悪なものたちにさえ永遠の罰をけっして加えない」としました。
この原罪の否定が「ニューソート」の教義でも重要な部分となります。原罪から解き放たれた人類(主にアメリカ人)は、それまでの清貧、勤勉を良しとする国柄から、蓄財、欲望を否定しないポジティブ・シンキングな国へと変貌するひとつのきっかけとなるのです。

フィニアス・パークファースト・クインビー
クインビーは1802年に米ニューハンプシャー州で生まれ、時計職人として生計を立てていました。
成人してからも身体の弱かったクインビーはメスメルの催眠療法と出会い、自身も治療家としての人生を歩みます。
それまで医者も治すことのできなかった病気を治すにつれ、「自分はイエス(キリスト)と同じことができるようになった」と自覚するようになります。
そのクリンビーとスウェデンボルグの思想の出会いが、「ニューソート」の元祖と呼ばれる思想体系を作り出しました。
病気の原因はすべて誤った心のありようが原因であり、それを正すことによって病気を治すことができる。
クインビーの思想は弟子であるクリスチャン・サイエンスの創始者メアリー・ベーカー・エディなど多くの人に影響を与え、19世紀末から20世紀初頭の「ニューソート運動」につながっていきます。

ラルフ・ウォルドー・トライン
トラインはニューソート界にあって、教会の人間ではなく、治療を行なう者でもなく、独創的な思想家だったというわけでもありませんが、
第2の地位まで昇りつめています。
彼は布教活動家であり、中でも著述家、講演者として名高く、彼の訴えは無数の人々に影響を与えました。
1897年に出版された『幸福はあなたの心で(In Tune with the Infinite)』は数年の間に50版以上を重ね、米国で150万部以上のベストセラーになりました。また海外20カ国以上で翻訳され、100万部以上売れました。現在までに400万部以上売られており、ニューソート書物のうちで最も人気の高いものに位置づけられています。ヘンリー・フォードも自分の成功の霊感をこの書物から得た、と語っています。
『幸せはあなたの心で』はエマニュエル・スウェデンボルグの思想に基づいて書かれています。トラインはスウェデンボルグについて「高度に啓された賢者であり、『神聖なる流入』と呼んだものとの関連において、偉大な法則を指摘した」と述べています。
トラインの本は、20世紀に発売された「成功本」「願望実現法や引き寄せの法則」のすべての元ネタと言っても過言ではなく、20世紀「ザ・マスターキー」「思想は現実化する」。およそ100年後に書かれた「ザ・シークレット」など明らかにトラインの主張していることを自分の本に取り入れたもの、あるいは下記のジョセフ・マーフィーの一連の本のように全く内容がトラインの本と同一なものばかりです。(マーフィーは自身がニューソートの牧師ですので、当然といえば当然なのですが)
日本では、「生長の家」創始者の谷口雅春がトラインの影響を受け、この『幸せはあなたの心で』も谷口雅春が訳して出版されました。

ジョセフ・マーフィー
もともとはカトリック、イエズス会の会員であったジョセフ・マーフィーは1920年頃、ニューソート派のディヴァイン・サイエンス教会の牧師となりました。彼は「眠りながら成功する」等40冊以上の本を出版し、潜在意識の力で、病気を治すことも、願いを叶えることもできるとしました。彼は富を肯定し、他のニューソート信者と同じように処女懐妊、原罪、すなわち人間の堕落やその救済、地獄や天罰などの教説に拒絶を示しています。